【17.12.30】お世話になった皆さまへ 〜宿屋大学の2017年「振り返り」〜

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宿屋大学の講座プログラムや受託研修では、受講者に必ず「振り返り」というものをやっていただいています。講座や研修で「新しく知ったこと(学んだこと)」、「考えたこと(新たに気付いたこと)」、そして「アクションプラン(行動に移してみようと思ったこと)」の3つについて24時間以内に箇条書きでレポートしてもらっています。これを行なうと、学んだことが定着し、整理ができ、学んで終わりではなく、行動に移す覚悟ができ、成果や自身の行動変容につながるからです。

宿屋大学は、昨年から年賀状を作ることを取り止め、代わりにブログに年末年始の御礼と来年の抱負を書くことで、年末年始の挨拶にかえさせていただいているのですが、今回は、この宿屋大学恒例の「振り返り」的に、綴りたいと思います。

【新しく知ったこと】

※新しく始めたこと、2017年を振り返って・・・

宿屋大学は宿泊事業のビジネススクールとして講座プログラムや公開セミナーを開催することがメイン事業でした。こうした講座開催を通して「筋金入りのホテリエ」育成を行なっていますが、今年、これに加えてふたつの柱ができました。


1 急増した「研修受託事業」

ひとつは、「研修受託事業」です。昨年から少しずつ増えてきましたが、今年3倍くらいいただけるようになり、企業としての株式会社宿屋塾を支える太い柱になりました。ホテルや旅館企業、行政や観光協会といったところから依頼を受け、マネジャー研修、リーダーシップ研修、CS向上研修といった研修プログラムをこちらで企画し、運営する仕事です。毎年リピートくださる企業も多いです。


2 ホテルの業務支援

もうひとつは、ホテルの業務支援です。こちらは、弊社ディレクターの平賀健司の貢献度が非常に高いのですが、ホテルの現場に入り込み、その組織の変革やスタッフのモチベーションアップを行なっています。まだ半年弱ですが、みるみる組織が健全化しています。経営者から大いに感謝されて延長を依頼されるまで成果を残しています。平賀自身が持つ元々の人間力やホテリエとしての実績と、宿屋大学のノウハウが合わさってこのような大きな成果と高評価につながったと思っています。


3 ゼミ

立教大学観光学部にて「宿泊産業演習」というゼミを担当しました。ホテルや旅館業に興味関心の高い2年生11人が集っています。ホテル業界入門講座的なレクチャーをしたり、ホテルを視察したりしながら、宿泊ビジネスとはなにか、宿泊ビジネスのリーダーは何を考えなければならないかを議論しています。来年3月には海外ホテルインターンシップも考えています。思考力やモチベーションが非常に高い学生ばかりです。生きること、成長することに本気です。こちらも本気で臨んでいますし、彼らが3年生になる来年度も喜んで担当させていただこうと思っています。

新しく始めたこととしては、「4 プロフェッショナルレストランマネジャー養成講座」や、魅力的なホテル・旅館の経営者・スタッフを紹介する「5 SWITCH BRIGHT(スイッチ・ブライト)」などまだまだありますが、長くなるのでこの辺で・・・。「振り返り」は、学んだことより、考えたこととアクションプランを重視しますので。

【考えたこと】

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1 オーナー・投資家にモノ申せるホテリエ

ホテルは、土地・建物という不動産を活用し、サービス・オペレーションして価値を生み出すビジネスです。つまり、不動産業とサービス業が融合した事業です。そして、世界的な潮流としてもう20年ほど前から、不動産の所有者と、サービス・オペレーションを担うホテル運営者が役割分担をして二人三脚でひとつのホテルをやっていくという形が主流になっています。
 
そして、いまの日本を眺めてみると、ホテルを持ちたいという不動産事業者や投資家がかなり増えている一方で、ホテル運営者はそれほど増えていないようです。つまり、需給バランスを考えると立場的にホテル運営者のほうが強いわけです(あくまで二人三脚ビジネスなので対立した関係にあってはいけませんが)。
 
こういう時こそ、オーナー・投資家にモノ申せるホテル運営者、ホテリエであってほしいのです。上下関係ではなく、対等なビジネスパートナーとして尊敬しあえる関係になることが、日本の宿泊産業の健全な形だと思います。

今年、私は某離島で、某ホテル運営会社が契約期間満了で撤退し、オーナー会社が自社で運営をした途端、サービスレベルが落ち、クレームが増え、スタッフが次々と辞めていって悲惨な状況になってしまったホテルを見ました。撤退したホテル運営会社の力をまざまざと見せつけられました。

ホテリエ(ホテル運営のプロ)の皆さん、いまは皆さんが活躍する絶好の機会です。ぜひ、自身のマネジメント力を強化してください。


2 仕組み化とAI化によるホテルの不動産事業へのシフト

少子高齢化が進み、ホテルという職の人気が落ちるなか、ホテルが急増しています。そうなると、人手不足になります。働く人の調達が、いま宿泊業界の喫緊の課題になっています。こんな時代になると宿泊事業者は当然、運営を簡素化し、仕組み化します。そして今年何度も聞くようになった「AI化」を考えます。

こうしたなかで、ホテルの無人化や民泊の流れはますます加速します。上述した不動産とサービスの話で言うと、ホテルが不動産事業に偏り、サービス業としての価値を下げているのです。つまり、ホテルが不動産事業化し続けているのです。

この横振れは、行くところまで行くと、きっと逆にも振れてくると思います。つまり、ホテルが仕組み化し、簡素化し、無人化すればするほど、人が恋しくなってくる。人が迎えてくれる、人のぬくもりのある空間に居たいという欲求を再確認するようになると思うのです。「ホテルは、やっぱりそこにいるスタッフとの触れ合い、人気(ひとけ)があって、ホテルと言える」ということに気付かされるでしょう。そのとき、人を大事に思うホテル事業者が必ず選ばれるのだと思います。


3 不動産ビジネスとしてやっているホテルのブラック化

あくまで「そんな傾向を感じる」という意見ですが、ホテルの価値は土地・建物、スペック、内装のデザインだと考えているホテル企業で働く現場スタッフの多くは疲弊していると感じています。人はコマであり、人件費はコストだと考えがちだからです。「いやいや、うちはホテル業をサービス業としてやっている」という企業経営者は、しっかり人に投資をします。スタッフを大事にし、人件費や研修費は投資であると考えています。「ホテル業界人の人生を応援する」をミッションとしている宿屋大学は、後者のスタンスのホテル企業を支持していますし、ホテルは人で成り立っていると気付いているホテル企業ほど健全でホワイトです。


4 今一度、経営の本質に立ち戻る

私も経営者です。どうしても「売上・利益」というところはしっかり見ていかなければなりません。ところが、この「売上・利益」ばかりに目が向き過ぎると経営がぶれやすくなります。年末年始を迎えるいま、「宿屋大学のミッションは何か」「宿屋大学の顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」という3つを自問自答することで、ぶれないようにしたいものです。ちなみに、宿屋大学のミッション・顧客・価値は、「人材育成を通して宿泊産業人の幸せを創る」です。これに該当しない仕事は一切しないのが宿屋大学のポリシーです。


【アクションプラン】


最後に、アクションプランとして、宿屋大学が2018年にやってみたい事業を・・・。


1 第七回「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」

宿屋大学の看板講座「プロフェッショナルホテルマネジャー(PHM)養成講座」も先日六期が終了しました。六期はパワフルな受講生が多く、切磋琢磨がなされて大いに盛り上がりました。アントレプレナー的なホテル経営者も多く、ホテル企業の雇われマネジャーホテリエの方たちと議論を交わらせていました。正直に申し上げて事務局は、彼らの密度の濃い切磋琢磨に甘えてしまった感があり、こちらは反省材料ですが、8カ月間の学びを通して生涯の同志を得ていただいたことは学校運営者としては最上の喜びでした。

七期も、六期と同じようなプログラム、スケジュールで現在企画中です。年明けにはリリースできます。8割がたリピート企業様からの派遣者で埋まってしまいますし、すでに申し込みをされている人もいますので、ご希望の方は早めに連絡くださいませ。


2 PHM卒業生のインタビュー連載記事

PHM講座も、未修了生を含めると、いまや学んだ方が130人を超えました。ホテル総支配人になられた人、ホテルを創って経営者になっている人、海外で活躍している人など、みなさん活躍しています。2018年は、そうしたPHM卒業生を巡り、取材して連載記事を書きたいと思います。


3 HOTEL OWNERS CLUBの運営

独立系ホテルのオーナー・経営者の方々から、「我々の勉強会を宿屋大学さんで運営していただけないだろうか」という相談を受けました。これは、実に光栄なことですので、二つ返事でお引き受けしました。年明け、「HOTEL OWNERS CLUB」を発足します。メンバーシップ制にし、年に4〜5回の勉強会と、先進地視察といった勉強をホテル経営者のみなさまとご一緒したいと思います。


4 連載「とんがりホテル」

今年、これまでにはなかったユニークなホテル、コンセプトが明確で斬新なホテルなどが多く誕生しました。そうしたホテルや旅館を取材して紹介する企画を検討しています(媒体は私の古巣の業界誌と相談中です)。これを立教大学のゼミ生と取り組めたらと考えています。

5 秘密のプロジェクト

2018年、宿屋大学は、新たなステージに上がります。こちらはまだ公開できませんが、春先には発表したいと思っています。業界の方でしたら、「お〜、そう来るか!」と思う取り組みかと思いますので、乞うご期待です。



宿屋大学は、宿泊業界の皆さまを応援することをミッションとしていますが、一方で、宿泊業界の皆さまに支えられ、応援していただいていることを痛感します。この場を借りて、御礼申し上げます。

2018年も、宿屋大学をよろしくお願い申し上げます。



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