【17.11.09】連載「お金をかけずに今すぐできるWEB集客」vol.3

【前編】 ≪第3回 予備知識B「室料UPのために」の続き 予備知識C「メタサーチ」 予備知識D「Real-Agtへのアロットメントにメス!そして奪還!!」≫


宿屋大学メールマガジン読者の皆々様へ

こんにちは。(株)宿援隊 隊長の石井 太樹です。連載3回目をアップいたします。
前回、「収益UPのために」、「室料UPのために」と称し、閑散日の集客より繁忙日の単価、とりわけ室料を上げる方が有効であることをお伝えしました。そして、そのためには、「ユニフォーム会計」、「レベニューコントロール」の考え方が必要であることを記しました。

今回はまず、前回触れられなかった「Rev-PAR」の考え方について記します。

「Rev-PAR」とは、“Revenue Per Available Rooms” のことであり、ホテル専門学校では、客室総売上 ÷ 客室総数(結果として、= 平均客室単価 × 稼働率)と教えられるケースが多いのですが、この説明で理解する学生は残念ながら少数派です。

ここに10室のビジネスホテルがあり、とある日、9,000円で2室、10,000円で2室、11,000円で2室の計6室が売れました。(4室は売れませんでした。)

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この場合、

客室総売上は60,000円 = 9,000+9,000+10,000+10,000+11,000+11,000
客室稼働率(OCC)は60% = 6室÷10室
平均客室単価(ADR)は10,000円 = 60,000円÷6室

ということになります。

では「Rev-PAR」は???
答えは、60,000円÷10室 = 6,000円 となります。

つまり、「Rev-PAR」は、売れなかった客室の売上を「0円」と捉え、上記ケースでいえば、「÷6」ではなく「÷10」で算出します。

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「Rev-PAR」とは、すなわち、『売れなかった客室をも含めた平均客室単価』であり、
よって、「客室総売上 ÷ 客室総数」となるわけで、さらに結果として、「平均客室単価 × 稼働率」となるわけです。

この「Rev-PAR」を上げることこそが、企業の目的である収益UPに直結します。

「Rev-PAR」は、「平均客室単価 × 稼働率」なので、それを上げるためには、単価と稼働率を上げることが必要となります。
ただし、同じ景気状況下では、単価と稼働は、いわば綱引きの両サイド = 相反する概念(例:単価を上げれば稼働は下がる) なので、実際には、単価か稼働のいずれかを上げることになります。

ちなみに、ハーバードビジネスレビュー編集部の「価格戦略を知るものが『利益』を制す」によれば、1%の単価UPは収益効果11%、1%の数量(ホテルでいえば稼働)UPは収益効果7%、1%の経費削減の収益効果は3%とのこと。

収益効果については、経費削減 < 数量(稼働) < 単価 の順となります。
※筆者は、このことを宿屋大学の小林先生(C&RM株式会社 代表取締役社長)から教わりました。また、筆者自身のホテル時代に経験した、とあるリゾートホテルでのシミュレーションでは、

A.単価を10%上げて、稼働が10%下がった(売上ほぼ変わらず) ⇒ 利益大幅増
B.単価を10%上げて、稼働が15%下がった(売上減少) ⇒ 利益増
C.単価を10%上げて、稼働が18%下がった(売上減少) ⇒ 利益同額
となりました。

A、B、Cいずれのケースも、限られた設備・サービスのなか、お客さまの数が減るので、顧客満足(クチコミ)UP→新規誘客&リピート率の向上という副産物も生じました。
つまり、ケースCの場合でも、中長期的に見れば利益増となるわけです。
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予備知識C「メタサーチ」

次に「メタサーチ」について、軽く触れます。

「メタサーチ」とは、国内OTA、海外OTAに加え、JTBなどReal-AgtがWEB上で販売している宿泊プランまで横断的に検索するサイト(価格比較サイト、最安値検索サイト)のことで、具体的にはtripadvisor、trivago、フォートラベルなどが挙げられます。また、近将来、Googleの本格参入も予測されます。

下記画像をご覧ください。

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これは、とある日の、とあるホテルを、とあるメタサーチで検索した結果です。
最安値は、Real-Agt商品の11,200円。これに対し、OTAの同様宿泊プランは83,400円です。

(この83,400円が適正であるかどうかは別として)“固定価格制”であるReal-Agtの商品をWEBで販売してしまうと、“変動価格制”であるOTAや自社ホームページの価格と大幅な開きが生じてしまい、みすみす収益の最大化を放棄してしまうという結果になります。

また、「自社WEBベストレート」などとホームページで謳っている場合などは、クレームの原因にもなりますし、特に親会社が上場している場合などは、非公正表示、コンプライアンス違反となるリスクすらあります。

ちなみに、上記Real-Agtの価格は、航空券やJR券と抱合わせて販売するための価格(IITレート、募集型企画旅行価格)であり、ホテル側はそれをWEB上で“バラ売り”することに同意しているものと推察されます。Real-Agtの商品造成の際、WEBでの“バラ売り”に同意しないことが肝要かと思われます。

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予備知識D「Real-Agtへのアロットメントにメス!そして奪還!!」

今回の最後はReal-Agtへのアロットメント(客室提供)についてです。
皆様のホテル・旅館では、Real-Agtへの客室提供について、毎回どのように決められておりますでしょうか? “前例踏襲” = 「これまで10室提供していたから、今回も10室提供」などとなっていたりはしませんか?

もしそうなら、それはイコール考えることと収益の最大化を放棄していることになります。インターネットがこれだけ普及した昨今、Real-Agtへのアロットメントは、もはや聖域ではありません!

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とはいえ、私はなにも、Real-Agtやアロットメントが全て悪いなどと述べているつもりは毛頭ありません。重要なのは、その精査・検証なのです。

私もホテル時代、Real-Agtの商品造成少しだけかじったのですが、その際、需要の高い・低い により、シーズナリティを決めます。
低需要日から高需要日の順で、ABCDEFGHIJ・・・という感じです。
ホテル・旅館側が送客してほしいのは、平日・閑散期にあたるA・B・Cです。

他方、GWや夏休み、年末年始、三連休などの特日が該当するH・I・Jについては、手数料が発生しない自社HPや低手数料の国内OTAで、黙っていても高値満室が見込める日です。

問題は、シーズナリティ毎の送客のバランスなのです。

A・B・Cもそこそこ送客してくれるからこそ、H・I・Jの客室も提供する というのなら話はわかります。

ホテル・旅館にとって、弱いところを送客してくれるのだから、特日に客室を提供する・・・理に叶っていると思いますし、これこそ“持ちつ持たれつ” = 真のビジネスパートナー関係ですし、義理人情の世界にも通ずると思います。

ところが、契約Real-Agt毎によく調べてみると、「たまに入ってきたかと思えば、特日」「送客は年3件のみで、GWとお盆と年末年始」「3年続けてシーズナリティA・B・Cの送客ゼロ」なんていうReal-Agtがきっとあるはずです。

そういうReal-Agtに提供しているアロットメントをビジネスライクに解約して、WEBに回し、収益の最大化を図るのが肝要なのです。

注@)精査・検証する際、FIT(個人予約)のみでやってはダメで、修学旅行を含む団体、あるいはランチストップ(日帰り昼食)の送客を加味⇒ホテル・旅館トータルで考える必要があります。
注A)精査・検証する際、売上ベースでみるとアンフェアになります。低需要日は単価が低く、高需要日は単価が高いからです。シティホテルやビジネスホテルでは延べルームナイツ、リゾートホテルや旅館では延べ人泊で検証するのがベターです。

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とある福岡のターミナル駅直結のホテル(約200室)では、約170室を多数のReal-Agtへアロットメント提供していました。この170室の提供は、インターネットがない時代からの踏襲で、特にビジネス的な論拠はありませんでした。しかも半数は手仕舞いが当日昼という状態で、カラで返ってくることも多々あったということです。

オーナーが変わり、上記、精査・検証を実施した結果、1社を残し、それ以外全てのReal-Agtと解約⇒WEBに回し、収益の最大化に成功しています。

ちなみに、残った1社は、低需要日であるA・B・Cをそこそこ埋めてくれていた超大手Real-Agtで、結果としてアロットメントが増えた ということを付記しておきます。(繰返しますが、全てのReal-Agtが悪いというわけではありません。精査・検証が必要ということです。)

最後に、Real-Agtからのアロットメント“奪還”方法について触れます。
“奪還”方法には「強硬奪還」と「穏健奪還」があります。(以下は、あくまで個人的に聞いた話です)

「強硬奪還の」具体事例は、日本屈指のテーマパーク系ホテルで、先ずは半年毎に各Real-Agtと目標数字をニギリます。その際、特日であるシーズナリティH・I・Jについては、アロットメント消化率100%を大前提にします。(GWやお盆、年末年始等なので当たり前ですよね?)その上で、A・B・C(もちろんD〜Jも)もそこそこ売らないと達成しない数字を目標数値とするわけです。

半年後に結果が出ます。Real-Agtから見て、大勝(例えば達成率120%)だった場合、当該Real-Agtに対するアロットメントは増えます。但し、実際にはほとんどないようです。勝ち、すなわち目標達成の場合、当該Real-Agtへのアロットメントは現状据置き、惜敗の場合は半減、大敗の場合はゼロ、すなわち解約 になるという具合です。
例えば、2シーズン連続で惜敗した場合、アロットメントは当初の1/4になってしまいます。

このホテルでは、これを繰返し実施することで、収益の最大化を実現しています。
しかしながら、ブランド力や知名度のない地場独立系ホテル・旅館では、上記施策は非現実的です。

そこで現実的な「穏健奪還」が必要となってくるわけです。
「穏健奪還」は、具体的には

@手仕舞い日を長くする
A返室の手続きを変える(「返室依頼書をFAX→電話で到着確認→先方責任者の承諾サイン記載のFAX返送・・・この時点で返室相成る」という手続きを、「返室依頼書をFAX→電話で到着確認、その際電話相手の名前を確認・・・この時点で返室相成る」というふうに変える)
BReal-Agtスタッフ(特に支店スタッフ)の名前や偽名、“野比のび太”等での仮押さえをしないことを約束させる

ことです。

この条件なら、ほとんどのReal-Agtが飲んでくれるのではないでしょうか?(実際、飲んでます。でないと、Real-Agt側に、解約になってしまうリスクが生じますから・・・)

Real-Agtとのお付合いの仕方を変え、WEB予約を増販することで、是非、収益の最大化を図ってみませんか?

次回は、予備知識E「消費者の検索傾向」について触れたいと思います。



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“WEB集客とレベニューコントロールのプロ集団”
 株式会社 宿援隊 代表取締役社長
 株式会社 宿力 取締役東京支社長 
 石井 太樹
 http://yado-riki.com/
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