【14.08.08】宿屋大学DVD新作「写真撮影入門講座」&「宴会レベニュー・マネジメント講座」リリース

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□□  宿屋大学ビジネスセミナーDVD、新たに2タイトルをリリース
       「写真撮影入門講座」&「宴会レベニュー・マネジメント講座」
□◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ yadoyadaigaku.com ━

 宿屋大学は、「宿屋大学ビジネスセミナーDVD」のシリーズとして、下記二つ
を新たにリリースしました。
 もっとたくさんの方に視聴いただきたいという講座を厳選し、リアルの講座に参加
できなかった方のために、受講料と同料金で提供するDVDです。


【Vol.22】「ホテル・旅館のための写真撮影入門講座
              〜写真の腕が格段に上がる簡単テクニック」
                       カメラマン 丸田 歩 氏
http://yadoya.theshop.jp/items/674579

★2014年1月9日に開催された講義を収録したものです。   
http://www.yadoyadaigaku.com/program/JK1317.html

           



【Vol.23】「宴会レベニュー・マネジメント講座〜宴会場の売り上げ最大化に向けて」
             ホープコンサルティングサービス 代表 岡村 望 氏
http://yadoya.theshop.jp/items/674588

           
★2014年4月17日に開催された講義を収録したものです。
http://www.yadoyadaigaku.com/program/JK1402.html
   
価格は、どちらも4200円(税込)です。



●「宿屋大学ビジネスセミナーDVD」
http://www.yadoyadaigaku.com/dvd/index.html
   
   


【14.07.30】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.86)

ウェブマーケを制するホテルは、ビジネスを制する!

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        『ホテル・旅館のウェブマーケティング実践術80』


 このたび、宿屋大学でいつもご講義を担当していただいている(株)コレリィアンドアトラクトの松本慶大氏の書籍編集を担当しました。『ホテル・旅館のウェブマーケティング実践術80』というタイトルで7月31日、オータパブリケイションズから発行されます。

 本書は、ホテル・旅館が取り組むべきウェブマーケティングの戦術・施策を80のチェックリストとともに体系的に伝えているものです。やればすぐに効果が現れるウェブマーケティングの実践テクニックを満載しており、ウェブサイトやウェブマーケティング未整備のホテル・旅館には大変ありがたい必携のバイブル書となるはずです。

 まずは、下記の20のチェックリストを確認してみてください。


宿泊予約を増やす実践テクニック20 選 □ ✓

 
□3秒以内に「泊まりたい」と思わせることができるか
□検索エンジンの結果の表示に、【公式】と明示しているか
□「Fの法則」と「Zの法則」を意識しているか
□メインビジュアルでUSPを表現しているか
□スマートフォン用ウェブサイトを用意しているか
□「旅行目的」と「旅行形態」を意識してフラッギングをしているか
□「限定」という魔法の言葉を使っているか
□リスティング広告に季節性キーワードを出稿しているか
□SEO外部対策、被リンクの購入は行なっていないか
□宿泊プランページが Google 検索結果に表示されるか
□CMSでブログを更新する仕組みがあるか
□自社で更新できるページに、SNSアイコンがついているか
□Google Analytics などのアクセスログ解析を行なう環境があるか
□日付検索モジュールはファーストビュー内に設置してあるか
□リピーター専用ページを設置しているか
□Q&Aページの内容が充実しているか
□自社サイトで予約した人向けに限定サービスを提供しているか
□予約プロセスを確認すためのお客さまアンケートを実施しているか
□マーケットインの発想でプラン造成をしているか
□ペルソナマーケティングで魅力を訴求しているか

 このうち、一つでもやっていない項目があったら、御社の宿泊予約はまだまだ伸びるでしょう。このような内容が本書には80項目紹介されています。


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      3C分析によってVP(独自の強みや魅力)を見出して訴求する


 JTB出身の松本氏は、旅行のスペシャリストであるだけではなく、独学でマーケティングを学び、ネット時代のマーケティングノウハウを駆使して全国のホテル・旅館を支援しています。私の知り合いのホテルも数社お世話になっていますが、「ウェブサイトを作成して納品」で終わりというスタイルではなく、経営者や担当者と一緒になってそのホテルのマーケティング戦略を考え、USP(独自の強み)や魅力を見出し、それを誰に向けて訴求していくか、訴求のためにはどんな写真がいいかをミーティングを重ねながら判断し、優秀なセールスマンと同じ働きをするウェブサイトを作っていくのです。ウェブサイト制作を通して、そのホテルは自身のマーケティング戦略の軸が出来上がるのです。
結果、コレリィアンドアトラクト社は、これまで200社以上のホテル・旅館のコンサルを重ねてきましたが、すべての施設で前年対比アップを実現しているだけではなく、同社自身も膨大なノウハウを構築していっています。

 私自身もほぼ100パーセント、講座やDVDなどの商品をウェブサイトで販売しているのでウェブサイトの有効性や即効性を実感しています。時代はウェブマーケティングであることは明白なのです。
 松本さんが本書で紹介している例を一つ紹介します。

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【メールマーケティングの事例として(78ページ)】
 具体的な事例を紹介しよう。 先日、弊社がコンサルティング契約している旅館から、次のような相談を受けた。
「今月の宿泊予約の数字が悪く、お金をかけずに間際の予約を獲得する方法はないか」
そして、私はこんな提案をした。
「一度ご宿泊いただいたお客さまに、『お得意様限定、 夏の献立試食プラン』 のメールを 打ってください」
 その旅館の担当者は、さっそく「お得意様限定の夏の献立試食プラン」を企画した。ア
ンケートで試食の感想を聞くなど、お客さま参加型の宿泊プランとし、約1万人のメール アドレス(一度以上宿泊されたお客さまでメルマガ配信を許諾されている人)にメールを 送った。すると、その月に、11件の予約獲得に成功した。
 旅館の料理献立に「試食」 という形で参加できることと、「限定」 という選ばれた人ということに反応がとれた成功例である。
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 このようにウェブマーケティングをセオリー通りにきちんと実行していれば、エージェントに頼らずに、自社で集客をすることができるのです。
 今後、松本さんの出版記念セミナーを全国展開する予定です。
 ぜひ、ご参加ください。








【14.07.09】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.85)

いま自分が働いているホテルを後輩に勧められますか?


 先日、某ホテルの20代前半のホテルマンに会ったときに次のような質問をしました。

「いまあなたが働いているホテルを後輩に勧められますか?」

 その男性ホテルマンは東京YMCA国際ホテル専門学校の卒業生、彼が働くホテルを志望する在校生が多く、就職指導を担当する私がそのホテルを、自信を持って就活生に勧められるかを確かめたかったのです。
 すると、とても残念なことに、彼は首を横に振ったのです。「いや、勧めたくないです」と言いながら・・・。
 このホテルの社員満足度はそれほど低くないと思っていたので、彼が言う実態を耳にしたときは意外でした。そして「業界全体はどうなっているのだろうか」と心配になりました。
 私は過去20年ほどの間、ホテル志望の学生の就職の支援をし、「一緒にこの業界を盛り上げよう」と背中を押して数百人もの若者をホテル業界に誘ってきた経緯があります。彼らの人生の数パーセントは私にも責任があります。宿屋大学は業界人の人生を応援するというミッションを掲げていますので、ホテル業界人が幸せにならないと私の仕事は世の中のためになっていないことになります。
 
 
 そこで、実態調査をしました。
 宿屋大学やオータパブリケイションズのメルマガ、リクラボのメーリングリストを活用し、2014年6月13日〜20日までの一週間で下記のようなアンケート調査を行ないました。
有効回答数は116。性別は、男81人、女35人でした。20〜25歳が23 人、26〜30歳が8人、31〜35歳が21人、36〜40歳が22人、41〜45歳が17人、46〜50歳が13人、51歳以上が12人でした。


質問1「いま自分が働いているホテルを後輩に勧められますか?」

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 結果は、ほぼ半数が「勧められる」と答え、5人に2人が「勧められない」と回答しました。
 もしかしたら、宿屋大学やオータパブリケイションズのメルマガを見ている方々はモチベーションが高い人が多く、業界全体の実態を表していないのかもしれませんが、半数が「勧められる」と回答したのには少し意外でした。

 この結果を、今度は「性別」・「年代」別にグラフにしてみました。
 計算方法は、次のようなポイントにしてその合計点を出しました。

 自信を持って勧められる           2ポイント
 自信はないがどちらかというと勧められる   1ポイント
 どちらともいえない             0ポイント
どちらかというと勧められない        ‐1ポイント
絶対勧められない              ‐2ポイント



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 明らかに、男性の方が女性よりも「勧められる」と回答(≒満足度が高い)しています。
 また、どちらも、20代では値が高く、30代前半で急に低くなり、30代後半で高まり、40代前半で下がり、40代後半から再び上がっています。
 ホテル業界は、30代前半と40代前半というミドル層の満足度が低いことが問題と言えそうです。


質問2(1)「勧められるのは、なぜですか」


 続いて、質問1の回答で「自信を持って勧められる」と回答した人に、その理由を聞きました。主だったものを箇条書きで紹介します。

●やる気と情熱があれば平等公平に評価されるから
●やり甲斐のある仕事をさせてもらっているから。
●仕事を通して知識・経験・人間性と本人自身が成長できる環境が弊ホテルにはあるから。
●働いていること、チャレンジできる環境が自信をもって幸福だと感じているから。
●キャリアについて熱心であるし、日頃から頑張る人には誰かが見ていて機会がある。
●給与は透明性あり他社より優れている。会社の事業計画を開示しているのでわかりやすい。それが安心感につながる。
●人間関係がいい、良い人が多い。良い人が良い人のまま仕事が出来る背景には、労働基準法が守られている事もあると思う。管理職の方々を除いては恐らくサービス残業も殆どない。残業自体も他と比べると少ないと思われる。その様な環境がスタッフ1人1人の余裕に繋がっている気がする。
●ホテルへの愛着があるから
●やりがいがあるから。楽しいし、やっていることに対してちゃんとした結果、評価を得られる。
●素晴らしいお客様と出会えるし、この仕事に就いたからこその出会いもたくさんあるから。拘束時間は長いですが、好きなことを仕事にしているのと、ゲストとのやり取りが楽しいから。
●外資系で、外国人の上司に自分の意見をはっきり言えるし、聞いてもらえる。だから働きやすい。
●街で働いている人間の何倍もの経験値を得られる。
●日本のホスピタリティやサービスは間違いなく世界トップであるそのトップに君臨するホテル業界で学ぶ事は他の国から見たらお金を払ってでも受けたい授業である。ただ終身いる場所ではないと思う。10年を過ぎたあたりから得られる経験値が極端に減る。
●自分が泊まりたいホテルだから。
●新たな事に挑戦できる土壌がある。
●従業員同士の気づかいとチームワークが良い。
●トレーニング環境が整っている。
●自分のビジョンが見えているから。




質問2(2)「勧められないのは、なぜですか」


 続いて、質問1の回答で「絶対勧められない」と回答した人に、その理由を聞きました。主だったものを箇条書きで紹介します。


●長時間(150時間以上)のサービス残業、スタッフを駒としか見ないマネジメント、華やかな世界とブラックな世界のギャップ、数字しか見ない親会社やマネジメント会社etc
●会社の方針があまりにも未来に繋がらない。
●昔、バブル時代をひきずる。
●上層部が自分の事しか考えられない。
●若者が使い捨てにされている。従業員を駒としか見てない。
●労働環境が悪いし、基準を満たしていないから。間違いなくブラックホテルだから。
●上司が独裁者だから。パワハラ、セクハラ、ブラック企業だという自覚がない社員たち。そして、さらに管理職や役員は、それを強要する。
●この職場しか知らない世間知らず、それを指摘しても開き直り。法に触れるようなことでも、知らん分からんで押し通す。
●風通しの悪さ、長期・中期・短期のビジョンのぶれ。
●GMと人事がひどい。エグゼクティブ意外の給料が低すぎる。
●給与は他の業種よりもあきらかに低いと感じる。友人などとの会話で同世代で自分よりも稼いでいる人々と比べてしまい、劣等感を感じてしまう。
●幹部の交代が頻繁、売上不振部署全員のリストラがあった
●昇給、昇格の制度があやふやで、規定がない。
●親会社の鉄道会社から出向で来ている、ホテルの素人が決定権を持っている仕組みが出来てしまっている。
●人の好き嫌いが査定の全てになっているため、真面目に成果を出している人が報われない。
●ゲストよりも会社が大事という考え方がある。


ホテル業界へのメッセージ


 最後に、「ホテル業界の未来に対し、なにか思いがある方は、お知らせください」と投げ掛けました。主だった意見を紹介します。

●せっかく人をもてなすのが好きな集団であるのだから、お互いを尊重しあって働けたらもっとモチベーションが上がるのではないだろうか。
●業界として、地位の向上を図っていかなければ根本的な部分の解決には至らないと考える。特に、給与面の待遇改善や他業種と比べた場合の環境整備、3K(きつい、きたない、くさい)といったイメージの払拭とサービス残業などの労働環境の改善。学校側(特にホテル専門学校)も、ホテルのカテゴリー別の教育にもっと取り組んでいただき、多様なホテルがあることをまず学生に知らせて欲しい。
●このままでは、近い将来、「ひと」の問題で営業停止に追い込まれるホテルが続出すると思われる。業界全体で問題提起し、改善すべき。
●マルチプレイヤー育成が大事です。
●ホテルは家である。というのが私の持論である。家族が健康で幸せに過ごすのが、家である。ホテルもそうあるべき。またそのように努力し続けるべきと考える。
●本気で育てる事を考え、世代交代をするぐらいの意気込みがないと何も変えられない。
●ホテル業界が観光立国に貢献することは、日本が外貨を稼ぐ手段の一つだと思います。
●ホテルは夢のある仕事、働くホテリエが夢をもてる職場にしたい。
●団塊世代やバブル組が居なくならない限り、決して改善されません。
●決して高給取りの職業ではありませんが、人を幸せな気持ちにする最高の職業だと思います。
●顧客満足の向上、そこから上がる利益は従業員満足が向上しないと上がらないということに経営者が気付く仕組みが必要。
●不動産物件として高収益モデルを確立することは否定しないが、労働効率=生産性向上にしか目を向けない経営が支配的である限り、従業員満足度は育まれない。ホテルで働くスタッフの充実感がやがて幾層にも積み重ねられ、企業ロイヤルティを育む。場当たり的な待遇だけでは一過性に終わる。顧客、地域、従業員に愛されるホテルへ真摯に取り組む経営こそ、普遍的な企業価値を創造するものだと切に思う。
●グリーンコアのように、ゲストの満足感を上げることが、スタッフのモチベーションも上げて、売上も上げられるようになれば良いのでしょうか?
●年齢が上がるにつれて、収入が少ないことで業界を去る人も多く、30代という中間層がいないことの原因にもつながると思われる。
●経常利益が少ないのは経営陣の怠慢であるにもかかわらずサービススタッフへその負担を転嫁しすぎている。
●ホテル経営陣は現場を全く理解していない人間が多すぎる。
元ホテルマンとしてスタッフへの愛情を経営陣がもっと持って欲しいものである。
●時代の変化に対応できる人材が求められる。
●悪くてもMARCHクラス、できれば早慶クラスの大学でホテル経営学部ができてこないと優秀な学生はあまり入ってこない。
●この問題の本質について、私見を申し上げます。最も大きな問題は離職にあるのではなく、以下の問題が大きいです。
●就活生の就活方法(自己分析の浅さ・将来設計の甘さ・コミュニケーション力の低さ)
●企業の採用方法(採用コンセプト・採用基準の不明確さ・内定者/新卒者の採用理由の共有の無さ)
●人事部と現場の繋がりの低さ。互いに無関心の為、新卒者がその狭間で誰にも頼れず、的確なアドバイスを得ることなく、廃れていく。
●現場スタッフの不勉強さ(この仕事の魅力・社会的意義や価値に対しての本質的な理解をせず、「バカでも出来る」「トップダウンの指示に従えば良い」「年功序列で昇格できる」という古い考えにまだまだ埋もれている)"
●日本の伝統文化を取り入、その場所でしか体験できない人的・景観的・食的なおもてなしの発信を出来るその場所にホテル業界がなって欲しい。
●「ホテルとはこういうもの」「今までもこうしてやってきた」「以前はこうだった」などと、後ろ向き、旧態依然とした考え方を変えることのできない上司や年長者にホテルを任せていては、顧客満足をあげつつ生産性を高める(利益率を上げる)というミッションは達成できない。利益率を上げることができなければ、いつまでたってもホテリエは低賃金・長時間労働のレッテルを剥がすことができず、優れた人材の確保がますます難しくなっていく。10年後・20年後にホテルの運営を担っていく20代、30代がこの危機感を共有し、真剣にホテル業界にイノベーションを起こしていく気概と、生産性向上のための具体的なアクションをもって団結していかなくてはならないと思う。
●かつての専門職であったわれわれのステータスが、徐々に失われつつあり、誰でも出来るような職種に変わっているのが不安。
●とにかく、人として正しく生きれる職業にしたい。
●「縦の線」をつなげていく人、動き、業界としての運動が大切なのではないかと考える。
●シティホテルに女性のマネージャーやそれ以上の立場の人たちがとても少ないことを心配しています。


 
 最後に、「自信を持って勧められる」と回答した方の所属ホテルを紹介します。
大和リゾート株式会社、セルメスイン日本橋、ミリアルリゾートホテルズ、プレジデントホテル博多、ヒルトン東京ベイ、星野リゾート、ホテルオークラ東京、ホテルエピナール那須、ホテルオークラ、メルキュールホテル横須賀、日本ホテル、リゾナーレ八ヶ岳、ana intercontinental ishigaki resort、株式会社プリンスホテル、東京ドームホテル、東京マリオットホテル、横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ、ウェスティンホテル仙台、横浜ベイホテル東急。
 
 アンケート調査にご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
 この業界の向上に少しでもつながれば幸いです。
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【14.07.01】第六回「日本のおもてなしは競争優位になるか 〜シンガポール×ホスピタリティビジネス〜」 by 臼杵さおり(シンガポール在住)

シンガポールのサービス事情



 今回は生活者目線で見たシンガポールのサービスについて、4つに分類してご紹介します。


カテゴリー A 「政府主導のサービス(開発/空港/港湾/貿易/教育)」


        
 シンガポールは東京23区とほぼ同じ面積しかなく、資源も乏しかったので、外国と交易し、経済を発展させることが独立以降、急務でした。そのおかげで急激な経済発展を遂げましたが、今でも貿易や産業促進に関する政府主導のサービスは実に迅速です。
 世界一満足度が高いとされる空港を持ち、住民はパスポートを改札機にタッチさせるだけで入国できます。出国時に観光客が買い物の還付金を申請する際も、パスポートとレシートを機械に読み込ませるだけの簡単手続きです。空港でこれらの窓口に行列ができることはありません。また港湾関連の申請書や通関処理も全てネット上で行われ、港の24時間稼働を可能にしています。
 労働ビザに関しての法令も状況に応じて頻繁に変更されるため、外国人は注意が必要ですが、諸々の手続きが煩雑な日本と比べれば、行政と個人、行政とビジネスの間のサービスはとてもスピーディで手間がかかりません。
 また、教育においても政府が管理しており、例えば、保育園や幼稚園は、教育省のサイトで場所や空き状況を一括検索できるのでとても便利です。また伝染病が流行すれば全土の施設を休校にするなど、迅速な対応がなされます。
 これらの政府系のサービスの特徴を一言で表すなら「経済最優先」。ポリシーが明確なので、あらゆる政策が首尾一貫し、民間側は対応策が考えやすいのです。


カテゴリー B 「個人事業主系のサービス」



 生活する上で大切な毎日の食事。共働きの家庭が多く、3食外食という家庭も少なくありません。そこで毎日の食事の場となるのが、ホーカーです(中華系、マレー系、インド系、ハラルなどの各種料理や飲み物、デザートなどの専門店が並ぶフードコート。住宅街、ショッピング街、ビジネス街、どこにでもある)。
 ホーカーのサービスの特徴は、「簡素でスピーディ、カスタマイズ可能」です。まずメニューが3〜4つにしぼられており、注文も調理も容易です。その場でトッピングやゆで加減、麺の種類などが選べます。メニューは少ないですが、調理方法はカスタマイズできるのが興味深いところです。
 メニューを見ていると、多少荒っぽく、「早く決めて!」と怒鳴られたり、ごはん系のテイクアウトは紙包み、ドリンクは透明のビニール巾着(縁日などで金魚を入れるときに使うあれです)だったりしますが、慣れれば気にならず、築地の魚市場のような活気とスピード感が小気味よく感じられます。
 また、点心や麺、バクテーなどの庶民派中華料理店の多くはテーブルにある注文表に数を記入するシステムなので、オーダーミスが少なく、英語が第二言語のシンガポール人や観光客にとっても、注文しやすいのも特徴です。丁寧さやヘルシーさとは無縁ですが、安い、早い、うまい!は、折り紙付きです。
 またインド人が接客する雑貨店や両替屋では、目に見えない早さで電卓をたたき、「ホラ、こんなに安いよ!」とアピールしてきます。
 いずれにしても、個人事業主系のサービスは「儲けのためなら、がんばるよ!」という気持ちがまっすぐ出ており、すがすがしさを感じます。
 病院もこのカテゴリーに入れることができます。こちらでは、ほとんどの医師が病院に所属せず、自分の名前のクリニックを開設し、商業ビルや大病院内に各々テナントで入っています。市民は病院を選ぶというより、医師を選ぶ感覚を持っています。
 そこでクリニック間で競争が発生し、最新の検査機器を導入したり、看護や受付スタッフを教育したり、満足度調査行ったりと様々な工夫がされています。その結果、医療においては日本と同等以上のサービスが受けられます。また多民族国家ですので、生老病死の価値観は様々であることが前提にあり、日本よりも患者の意志が尊重されるように思います。


カテゴリー C 「雇われスタッフのサービス」



 生活する上で一番困るのが、このカテゴリーC。具体的には、スーパーのレジ、銀行や郵便局、鉄道の窓口、カスタマーセンター、一般従業員、一般社員と呼ばれる人たちのサービスです。
 基本的に窓口や接客業務は人気のない業種です。機会があればもっと高給の仕事に転職したいと思っている人が多いのではないでしょうか。窓口やレジではどんなに人が並んでも、気にせずにダラダラと作業する人をよく見かけます。また食べながら、飲みながら、スマホしながらの接客にもよく出会います。
 シンガポールでは幼稚園時代から競争社会にさらされ、「たくさん稼げるよい職業人になって国に貢献しなさい」という教育を受けており、給与の上がり幅が少ない接客業務や専門度の低い一般業務についている人は「ほんとはこんなの、私の仕事じゃないのに」という複雑な気持ちがあるのかもしれません。
 一般従業員も、ジョブディスクリプション(会社と個人の労働契約の中で、その従業員の業務内容について具体的に記した書類)に沿った仕事はこなしますが、「これをやらなかったら、チームに迷惑がかかる」や「取引先が困るだろうから、このデータも用意しておこう」といった発想はありません。
 日本では、このカテゴリーCの業務にあたる人々の業務レベルがとても高いのでここにギャップを感じる人が多いようです。「お客さんが入って来たら挨拶をしたり、顧客やチームのことを考えて仕事をするのは当然じゃないの?」と考える日本人は、みなびっくりします。
 ただ、日本ではこのカテゴリーCの業務レベルの高さは、スタッフの犠牲の上で成り立っている部分も多々あり、長時間労働やサービス残業が懸念されています。シンガポールのように、あいまいな仕事をなくし、定時に退社する、忙しくても従業員の休憩時間を確保する、緊急でない荷物の輸送は従業員のためにも行わない等、見習うべきポイントもあります。シンガポールのカテゴリーCはまだまだ改善の余地がありますが、実は相互に学ぶところが多いのではと感じています。


カテゴリーD 「独立系のサービス」



 洋服や雑貨のセレクトショップ、カフェやスイーツのお店、アーティスト、スポーツインストラクター、タクシーの運転手など、「仕事はライフスタイルの一部。せっかくなら楽しんで仕事した方がいい」と思っている人たちによるサービスはどうでしょうか。
 これらの人たちは仕事中も、服装や話し方に公私の区別がありません。時に丁寧さやプロフェッショナル性に欠ける場合もありますが、フレンドリーでカジュアルな接客に好感を持つ人も多いことでしょう。またアート、ナチュラル、エコ、健康といった世界的な潮流を意識したコンセプトのお店も増えており、今後もこのような個人を起点にしたサービスは増えていくのだろうと思います。


日本も戦略的な取り組みを


 シンガポールは、長年サービスの向上に頭を悩ませ、これさえできれば、とても魅力的な国になるのに、という思いを抱き続けてきました。現在、政府主導でサービスの生産性改善、顧客満足向上への取り組みが強化され(特にカテゴリーC)、少しずつ、その成果が出始めています。
 また今後予想される労働力不足に備え、世界的企業の人材教育機関を誘致したり、アートやデザイン、文化にも投資を行い、サービス産業の総合的な発展に力を入れ始めています。
 日本は、サービス向きの国民性であり、文化的にも圧倒的なアドバンテージがあるにも関わらず、その資源を十分に生かしきれているとは言いがたい現状です。サービス工学やITを導入し、不必要なサービス慣習を見直し、他国に真似できない本質的な部分に投資すること。そして、サービス分野において、日本が人材の教育拠点、研究拠点となっていくことを切に切に願っています。



【14.06.16】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.84)

売上拡大や高利益率よりも、生涯顧客の「質×数×長さ」というモノサシで


 先週土曜日、6月14日、『社員が夢中になって働き出す 包むマネジメント』が出版されました。前作『巡るサービス』に続く、ホテルグリーンコアのホテルマネジメントを追いかける企業変革ノンフィクションドキュメンタリーです。『巡るサービス』を読まれた「ぶんか社」の編集者さんから、「ぜひ、うちから第二弾を出しませんか?」というお声を掛けていただき、一年がかりで上梓しました。


 今回の「雑学ノート」は、本書の骨子を紹介したいと思います。
 ホテルグリーンコアは、見た目は普通のビジネスホテルです。でも、やっていることはその他大勢のビジネスホテルとはまったく違います。セオリーの逆です。ビジネスホテルの一般的なセオリー(勝ちパターン)は、人的サービスを極力省き、スペック(建物や付帯施設の魅力)で集客し、ランニングコストの優位性で勝負するやり方です。一方のグリーンコアは、スペックではなく、人的サービスに力を入れて顧客をつくり、リピートや口コミによって集客します。

 お客さまには二種類あります。新規客とリピート客の二種類です。グリーンコアは、リピート客(≒顧客)をつくり、大事にする努力を最大限頑張っているのです。
 この努力の方向性(方針)の正当性を裏付ける二つの法則があります。
 一つは、パレートの法則です。有名な「二割のお客さんが八割の売り上げをつくる」という法則です。だから顧客を大事にするのです。
 もう一つは、「一度来たお客さまに再来店してもらうコストは、新規客を一人獲得するコストの5〜6分の1で済む」という法則です。グリーンコアは、顧客を大事にするという方針で、全宿泊者数に占めるリピーター数の割合を6割以上にし、結果、全館、平均90%前後の稼働をキープしています(もちろん、十分な利益も出しながら)。
 数多くの顧客を支え、顧客に支えられているのです。結果、今の売り上げも、未来の売り上げも彼らによって担保されるという安定経営を実現しています。
 簡単にお伝えすると、グリーンコアのビジネスモデルのポイントはこういうことです。ただ、短く伝えるとこうなるけれど実は、こういう「結果」になるまでには、かなりの「時間」と「努力」と「ビジネスの研究」と「すったもんだの繰り返し」があるのです。
 それをストーリーと解説の繰り返しで伝えるのが本書です。


 では、具体的にグリーンコアはどのようにして顧客づくりをしているのでしょうか。実はここにもたぐいまれな戦略ストーリーがあるのです。
 グリーンコアでは、「積極的にお客さまに関わっていく接客」を全社的に行なっています。お客さまのことを積極的に知ろうとし、潜在ニーズを探って応えるということを実践しています。しかも、上からの指示ではなく、スタッフが楽しみながら自らやっているのです。ですので、スタッフの自発性でキモなんです。

 その自発性を育むマネジメントが「見守る(包む)マネジメント」です。温かい眼差しでスタッフの成長や意欲の高揚を見守る経営スタンス。包み込むように、スタッフの心に寄り添いながら…。
「見守るマネジメント」は、放任主義でもなく過干渉でもありません。スタッフのすることに口出しせず、黙って見守るのです。ただしそれは、放任主義とも違います。上司は必要に応じてスタッフに関わっていく。ずっと見守り続け、ここぞというタイミングでストロークを出す。ポジティブな変化は加速させ、ネガティブな変化は流れを変える。そんな心に寄り添うマネジメントによって、スタッフはいつのまにか仕事に夢中になっていくのです。お客さまにホスピタリティを発揮する接客を楽しそうにするようになるのです。本書では、そんな「見守るマネジメント」の事例とノウハウを詳述しています。


 また、もうひとつ、執筆をつづけるなかで発見がありました。

「日本人が進むべき方向は、高利益率や規模の拡大じゃないのかもしれない」

 ということです。

 短期的な売り上げ規模の拡大や高い利益率をつくることよりも、大儲けしなくても多くの顧客と末永くつながり、長期で安定した利益をもたらすビジネススタンスのほうが日本的ではないか。コスト優位性や高利益率というモノサシを捨て、ひたむきに「Worth」を磨き、その輝き度合いというモノサシを持つべきではないだろうかということです。

「Worth」を探求することこそ、価格競争に巻き込まれない戦略、皆が結果としてハッピーになれるビジネススタンス、日本人がとるべきビジネスのあるべき姿であるということを、私は本書を通じて伝えたいのです。独自の「Worth」を見つけたグリーンコアを紹介することで、これを提言したいと考えています。



【14.06.03】第五回「日本のおもてなしは競争優位になるか 〜シンガポール×ホスピタリティビジネス〜」 by 臼杵さおり(シンガポール在住)

トイレのホスピタリティ


 私のこちらでの生活が始まって半年がたちました。
 シンガポールのサービスへの感想は少しずつ変化してきました。というより、私の方がこの場所に合わせて変化してきた(鍛えられた)という方が正しいかもしれません。来て間もないころは、「サービスがいい!」と感じることが多くありました。続いて、「ありえない!」と叫ぶ日々が続き…現在は、最初に感じたときとは違った意味で、「サービスが発展する可能性はとても高い!ひょっとしたら日本以上に…」と感じています。今日までの感想をまとめると、「サービスはイマイチだけど、ホスピタリティはピカイチ。日本や欧米とは違ったサービスとホスピタリティのベストミックスが生まれそう!」という感じです。



 シンガポール航空に乗ってシンガポールの玄関口であるチャンギ空港に降り立つ。ここまでのサービス評価はとても高いです。機上でのおしぼり、ハーゲンダッツ、最新の機内設備、きれいなお姉さん。空港ではビザを持っていれば税関に並ぶことなく、スイカをタッチするように自動改札にパスポートをタッチして入国。モニターにはWelcome to Singapore! Ms Saori Usuki と映し出されます。データを読み込んでいるので当然といえば当然だけど、分かっていてもちょっと嬉しいです。
 同じく、空港のトイレには手洗い場のところにタッチパネルのモニターが設置されています。「きれい、よくない、掃除してほしい、床がぬれている」などの選択ボタンがあり、「床がぬれている」にタッチすると、速やかにモップを持って来てくれます。これにはとても感心します。


 一方、日本では、空港やサービスエリアの手洗い場に「このトイレは○○が掃除いたしました」という小さなボードをよく見かけます。私はいつもこれに違和感を覚えるのです。
 このボードの目的は一体なんでしょうか。考えたところ、2つあると思います。一つは外向きの理由。利用者に対して、「掃除する人がいるのだから、なるべくきれいに使ってね」という無言のプレッシャー。
もう一つは、内向きの理由。清掃担当者に、「アナタの名前を出しているのだから責任を持ってきれいにしてね」という、同じく無言のプレッシャー。どちらにしても、このボードの違和感は、個人の名前が書いてあるのに、メッセージの本質的な送り主が見えないことにあります。
 このメッセージの送り主は、清掃担当者に名前を書かせている清掃業者の企業経営者です。実はこの経営者は利用者のことも、清掃担当者のことも思い遣っているように見せて、その腹はどちらのことも思い遣っていないのではないでしょうか。「トイレ清掃はコストだから、手間かけさせないで」というのが本音のような気がするのです。公共のトイレという、パブリックでプライベートな空間に、本来、個人を識別する「名前」は不要なはずなのに、会社の都合という「社会」を持ち込んだところに違和感が残るのです。
 公衆トイレのあるべき姿は、「どの方にも、清潔に気持ちよく用を足し、身支度を整える場所」です。しかし沢山の人が利用するなかで、その快適性は徐々に損なわれていきます。快適性を維持するには、「使用者がきれいに使う」ことと「頻繁に清掃する」ことの2つが必要です。しかし、ここで清掃業者は考えます。清掃はコストがかかるのでなるべく回数を減らしたい。それなら名前を掲示するボードを置いて、清掃者と利用者双方に責任を持たせようと。これが企業経営者の本音なのです。



 キャノンではセル生産方式(ベルトコンベアではなく、一人で製造のほとんどの行程を担う多能工技術者による生産方式)でコピー機を製造する際、最後に、コピー機の内側に製造担当者の名前を刻印しているそうです。
 なぜお客様に見えない「内側に刻印する」するのか。一つは、担当者への責任と満足感のため。これは、上記のトイレボードと期待する効果は同じです。しかし、外側と内側ではその意味が異なる。実際にコピーをする人からは、誰が製造したかは分からない。ただ、キャノン製というだけです。万が一不具合があれば、それは製造担当者個人の責任ではなく、キャノン全体が責任を取ります。つまりキャノンは、一人でコピー機を作り上げた誇りを従業員に感じてもらいながら、「不具合があった場合は会社が責任を取るよ」というメッセージを伝えたいのだと思います。

 ホテルのロビーや温泉宿のトイレはどうでしょうか。常にきれいです。そこに名前のボードはありませんが、落ち着きます。それは「きれいである」という状態の中に、人の気配を感じるからです。
 名乗っている方が不気味で、名無しの方が安心感がある。不思議ですね。そしてその場がきれいだと、自分もきれいに使わなきゃ、と体が勝手に動いてしまいます。それは「きれいな状態」そのものがメッセージとなり、利用者の無意識に働きかけるからです。このように相手に言葉で何かを強制するのではなく、自然とそうなるように場所を整えること、これをホスピタリティマネジメントでは、「述語的な状態」と呼び、理想的な状態として挙げています。
 つまり、述語的な状態であれば清潔空間は黙っていても維持でき、逆に主語的な状態(皆が自分の都合ばかりを優先させる状態)であれば、トイレはどんどん不潔・不衛生になっていくのです。
 また「きれいである」という状態は、清掃担当者にも、「これくらいきれいな状態に保つのが普通である」というメッセージにもなります。つまり、「きれいな状態」が次の「きれいな状態」を生み続けるわけです。旅館や、清掃を自分たちで行っている工場では、「気づいた人がさっとふく」文化が根付いています。
一方で、シンガポールのように、いろんな文化を持つ従業員がいたり、多様なトイレ文化の人が利用する国際空港のトイレをきれいに保つにはどうしたらよいでしょうか。やはり基本は、きれいな状態をなるべく長い時間保つことです。しかし当然、上記のような「気づいた人がさっとふく」暗黙知は期待できない。これを仕組み化するにはどうしたらいいのかを考えた末に、シンガポールはITの力を借りたのだと思います。「汚れていたらモニターをタッチして知らせて」もらい、きれいな状態を長く保つ。これも一つの最適解だなと思います。

「その注意書きは、不気味じゃないか?」、「誰から誰へのメッセージか?」、「記す場所は適当か」、「見る人をどんな気持ちにさせるものか」、「スタッフや利用者に責任を押し付けていないか」、「メッセージを効果的に伝えられているか」、「暗黙知が文化となっていない部分はITなど別の方法でフォローできているか」……。こんなことを考えていると、トイレ滞在時間がついつい長くなってしまうのです。










【14.05.18】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.83)

「意図しない」をデザインする


 先日、インドネシアのバリ島に行ってきました。約一年ぶりの再訪です。
 渡航中、つらつらと考えていたことがありました。
「意図すること」と「意図しないこと」についてです。
 今回は、これについて考察を巡らせたいと思います。

 例えば、観光地。最初から観光地として作られた場所って、どこか違和感ありませんか。例えば海外の街や文化を模して造られたテーマパーク。または、浅草にあるような、外国人客目的に新しく作られたレストラン。こう言った場所は、どこか恣意的な印象が邪魔をするのか、本物を真似てつくったものだからか、どこか嘘くさい。
 一方、バリ島の山奥にある「ウブドゥ」という村は、芸術の村として発展しました。別に観光地としてつくられた村ではありません(ただし、今は多分に観客目的の建物や施設が乱立していますが)。バリ人が先祖代々長い間生活を連綿と続けてきた結果、出来上がった村なのです。それが観光客から見たら面白いのです。しかしそれは、「結果、面白いものになった」ということです。だから、「作られてしまったウブドゥ」は、俗っぽくてつまならい(一方で、西洋人から見たバリを表現したホテル、つまり西洋とバリのフュージョンの味は、ものすごく魅力的なのですが、これはまた別の話として)。

 バリのとある村にある祠を囲む壁。この壁に観光客を魅了したいという意図はない。
 何百年か前にこれを作った職人の技術と時間が造り上げた魅力だけが伝わって来る。
 

 個人的な話ですが、私にとって海外旅行の最も大きな魅力はカルチャーショックを受けることです。ショックまではいかなくとも、初めて見るもの、味わうもの、感じるもの、「こんなオモロイ世界がまだあったのか、こんな奇特な文化があったのか?!」という発見と驚きです。だからなのかも知れません、意図的につくられたものには、そうした感覚は持ちづらい。素直に「面白い!」って思えないのです。

 旅行先で食べる食事にも感じます。ローカル料理は、ホテル内レストランや観光客が行く上品なレストランでいただくよりも、現地の人が日常的に食べているものを出す食堂で現地の人に混じっていただく方が数倍美味しいのです。ローカルの料理は現地の人が食べるものと同じものを出せばいいのに、前者のレストランでは観光客向けに味付けや食材を変えて出してしまう。そこには観光客に合うようにという意図があり、結果ニセモノになってしまう。

また、果実が名産になっている地域が、その果実を使って「○○ワイン」といったお酒を生産して売り出したりするのをよく見かけますが、たいていの場合、味が広く認められることも、ヒット商品になることもはありません。
 つまり、意図して作られたものは人の心に響きにくく、意図しないけれど結果としてそうなったことはとても心に響くのです。


 こんなことを考えていると「意図したもの」と「意図を感じないもの」って、周りにたくさんあることに気付きます。

ホスピタリティもそうです。「この人を何が何でも常連客にしてやろう」といった意図が相手に伝わったとたん、受け手は打算を察知してありがたみが薄まります。とにかく目の前の人のためにできることを精一杯やって差し上げようとする気持ちが心に響いて、結果顧客になっていく。

人の成長や変化もそうですよね。「もっと大人になりなさい」なんて言われてもまるで伝わらないけれど、環境を整えてあげて、成長を応援してあげる(「おお、最近すごく良くなったね」とか声を掛けてあげる)と、自分で成長していくし、結果としてどんどん育つ。
人に気付いてほしいことがあるときに、「この本を読みなさい」といって渡しても、気づかせたい人の意図が透けて見えた瞬間、人は「操作されるものか!」と頑固になる。


     東洋と西洋が融合された雰囲気のあるRegent Baliの客室


 バリ島ウブドゥにある伝説のリゾート「アマンダリ」のトイレは、それはそれは素敵な香りが充満しています。チューべローズの花の香りです。きっと、この香りをどこかで嗅ぐたびに、アマンダリを思い出すだろうというくらい美しい香りです。でも、もしこれが芳香剤だったとしたら興ざめです。花は人間を喜ばすために素敵な香りを放っているのではないはずです。そこにはまったく意図はない。花が子孫を残すために出す香りを人間が嗅ぐと、結果として喜びになる。

 魚もそうです。養殖して育てられた魚の味が、天然でとれた魚の味を抜くことはなかなかありません。


  意図した笑顔(つくり笑顔)と、意図しない笑顔(内側から湧き出てくる
  自然な笑顔)も、伝わる人には伝わってしまう。だから、サービスマンは
  仕事を楽しまなければいけないし、幸せでなければならない


 一言で言うと、「わざとらしいものは伝わりにくい」。

 ホテルグリーンコアの金子卓司会長がよく言うことなのですが、意図しても伝わらないのです。意図しないでやっていることが結果として伝わるんです。
そうはいっても、人生やビジネスにおいて、万事「意図しない」で行動することはあり得ません。ウブドゥやチューべローズの花の香りや天然魚のように、(本来の意図とは違う魅力が結果的に伝わる)本物を提供できればいいのですが、そうではない場合、すべてを結果任せにする生き方やビジネスが成功する確率は低くなります。そこには、戦略という発想も必要です。

 では、何をしなければならないか。
「意図しないをデザインする」ことです。

 これはとても難しいのですが、このデザインする力が必要なのだと思います。近視眼的でも、短絡的でもなく、手抜きせず、近道を選ばず、コツコツと、鳥瞰的な視野で全体をデザインしていく力です。

 そうやって長い目でデザインされてできたものは、結果的に「意図していないでできたもの」に限りなく近い成果物なのかもしれません。
 量産されたものではなく、唯一無二のものだからです。松坂健先生が「旅館入門講座」で語られたように、Valueという価値ではなく、「意図しないをデザインする」ことでWorthという価値を創り上げていくことが、何でもかんでもコモディティ化してしまう今の時代に必要な企業努力、個人の努力なのだと思います。














【14.05.06】第四回「日本のおもてなしは競争優位になるか 〜シンガポール×ホスピタリティビジネス〜」

第4回 カジノリゾートのゆくえ


場所のホスピタリティデザイン


このゴールデンウィーク、シンガポール旅行者にオススメした場所の一つが、マリーナベイサンズ(以下、MBS)。もちろん、多くの人が屋上のスカイデッキやカジノを目指しますが、ここの魅力はそれだけにあらず。この地に住んでいる我が家も月に2度3度と訪れる場所です。

その理由は下記の通り。

@ゆったり感
 ショッピングエリアの通路幅が3メートル以上あり、ベビーカーで通行しやすい。人が多くても「混んでいる」という印象を与えない。ゆえに、「家族連れ」も「大人グループ」もそれぞれのプライベート感を保ち、混雑によって不快な気分にならない。

A快適さ
 海面に面したデッキテラスが広く、よちよち歩きの子供を放しても安心。カフェが多く、休憩しやすい。建物への入り口が多く、デッキを散歩していて暑くなったらすぐ建物に入れる。

Bあらゆる顧客層に対応
 高級ブティックばかりでなく、各ブランドのリーズナブルなラインのショップやファストファッション、オフィスカジュアル服のお店も並ぶ。1000円程度で楽しめるフードコートもあり、あらゆる顧客層に対応している。

Cアクセスのよさ
 タクシー、電車、バスでアクセスしやすい。

D数多くの魅力的な付加価値
 隣接の博物館や植物園でも遊べる。ほぼ毎週末、音楽やスポーツのイベントが開かれ、屋外でビールや屋台フードを楽しめる。夕方には、海沿いをランナーが行き交い、日が沈むのを待ちながらオフィス街の夜景を楽しむことができる。

と、このように大変魅力的で過ごしやすい場所になっています。シンガポールにはマリーナベイサンズ、セントーサ島の2つのカジノリゾートがありますが、私はシンガポールに来るまで、カジノリゾートにはいいイメージがありませんでした。しかし、これらの様子を見ていると、とてもクリーンで過ごしやすく、こんなリゾートが日本の都市にもあったらいいのにと思います。



商品を売るための施設は一般に「商業施設」と言いますが、MBSは、何も買わなくても、楽しい場所であり、観光客と地元の人の両方が快適に過ごせる場所づくりがされている、ホスピタリティデザインの場所だと感じます。

MBSの設計者、モシェ・サウディ氏のホームページに次のような言葉がありました。
「都市計画では往々にして個人がないがしろにされる。いかに巨大なスケールだとしても、そこに集う人々から人間らしさを奪うべきではないし、生活を豊かにするものでなくてはならない」

「外側」は奇抜なデザインでランドマークとしての役割を果たし、「内側」は人が集まる場としての役割を果たす。この2つを見事に両立させる氏のデザインコンセプトは、現在計画中のチャンギ空港新施設にも反映されることでしょう。

シンガポールから学ぶこと


シンガポールのハブ都市政策に詳しい統括・ハブ機能研究所の木島洋嗣氏によると、観光新興の目的を開業数年で達成し、なおかつカジノのデメリットを最小限に抑えているシンガポールの事例からは学ぶものが多いということです。

カジノ合法化に際してはシンガポールでも、ギャンブル依存症や犯罪増加などが懸念されましたが、現在のところ、観光客以外の国民や永住者への入場料徴収、相談窓口の設置やルール違反への罰則などで対応しているそうです。日本でのIR実施法成立までにはいくつか問題がありますが、このような不安材料への対応方法も参考になるとのことです。

また日本版IR実施法が成立すれば、まずはビジネス、観光の拠点である大都市での開発が計画されるとのこと。なかでも、すでに夢洲という具体的な場所を上げ、誘致に知事自ら手を上げている大阪が有力だと見られているそうです。

東京や大阪のような大都市で成功すれば、第2段階で地方にもできる可能性がありますが、短絡的に「空いている土地があるからリゾート開発」ではかつてのリゾート法の轍を踏むことになってしまいます。本当にこの場所でいいのか、空港や公共交通ターミナルからの動線は十分か、ここを訪れた後、人はどこに向かうのか、リゾート内のホテルか、街中か、他の観光地に行くのか。地元にとって雇用だけで確保だけでなく、そこで働き、そこでお金を使う、地元の経済のポンプとなり、労働と消費が循環しているか等、新しい開発のあり方を目指す必要があります。


2013年シンガポールを訪れた観光客は1550万人。2つのカジノリゾート開業前の2009年比で約50%増。更に観光収入は09年12.6億Sドルに対し、23.5億Sドル。約80%増という驚異的な伸びを記録しています。

同様の結果が得られるかどうかは、政府が観光戦略を国家戦略と位置づけ、複数の省庁が密接に絡み合う観光政策のリーダーシップをとっていけるかにかかっていそうです。ハコモノありきでない、観光地のPRだけでない、国の総合プロデューサーとしての役割が問われています。

また少し先の話ですが、日本のインフラサービスの正確性や接客サービス業の質の高さを生かしたIRオペレーションにも期待していきたいです。





※IR(Integrated Resort)…カジノを含む、ホテル、ショッピングエリア、飲食店、MICE会場、劇場等エンターテイメント施設を併設した統合型リゾート。



【14.04.26】第三回「PHM養成講座『スカラシップ』」のご案内

◆□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□□ 第三回「PHM養成講座『スカラシップ』」のご案内
□◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ yadoyadaigaku.com ━
       http://yadoyadaigaku.com/program/BS1401.html

 宿屋大学は、第三回「プロフェッショナルホテルマネジャー(PHM)養成講座」
を6月からスタートさせますが、本講座に「スカラシップ(奨学金制度)」を設けます。
 応募された方から一名(絞り切れない場合は最大二名)を選抜し、本講座を無償で
受講いただけるようにします。

「本講座を受講したいが受講料の支払いが難しい」という個人が対象です。
 応募には、履歴書と職務経歴書、そしてエッセイの提出が必要です。
 プロフェッショナルホテルマネジャーを目指す方、ホテル・旅館業界に貢献したいと
考える方ならどなたでも応募可能です。

 締め切りは、5月7日(水)。
 
 履歴書と職務経歴書、そして「どんなホテリエを目指すのか」のエッセイ(800
〜1200字)を近藤までお送りください。書式は問いません。

      kondo@yadoyadaigaku.com


【14.04.15】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.82)

人が人として人のために働くということ



 4月7日から11日までの5日間、東京YMCA国際ホテル専門学校の新入生オリエンテーション合宿に講師のひとりとして参加しました。
 合宿場所は富士山を目前に仰ぎ見る山中湖畔の東京YMCAのキャンプ場です(91年前に作られた、日本初のキャンプ場です)。ここで新入生80人が二泊三日を過ごします。我々受入スタッフはこれを2クール回し、計160人の新入生を向かい入れます。
 本合宿では何をするのか。それは、ホテルパーソンとして、次の日からどこのホテルに行っても通用する立ち居振る舞いの型を会得してもらいます。
具体的にいうと、全員の前で自己紹介をします。クラスメイトや、応援のために参加している二年生、卒業生、教務、講師など約100人の前にある壇上に上がり、自己紹介をするのです。





「なんだ、自己紹介だけか」と思った方は早計です。
 名前を呼ばれたら、自分の最大限の声で「はいっっ!!!」と返事をし、靴音を立てないで歩き壇上まで行き、型どおりに6つほどのフレーズを、これまた最大限の声で叫びます。最大限の声を出していなければやり直しです。お辞儀も最敬礼です。早すぎやり首が落ちていたりすると、またやり直しです。
 これを新入生全員が行ないます。東京YMCA国際ホテル専門学校には、厳しい「頭髪・服装スタンダード」というものがあり、その通りの頭髪や服装をしていないと合格にはなりません。その場合は、壇上から下ろされ、会場の外に出されます。普段は笑顔の教務スタッフもこの合宿期間中だけは甘い顔を一切見せませんし、ときに怒鳴ります。怖い鬼のお面をかぶっているかのようです。





 この合宿の主目的は「型」を身に付けることですが、実は、この合宿にはそのほかにも数々の効果があるのです。実によくできたプログラムだと思います。
 一つは、社会人になるための訓練である専門学校と、これまでの高校生活は、まったく違うということを伝えることです。つまり、気持ちを切り替えること。山中湖にやって来たときの新入生と、合宿を終えた新入生では、明らかに態度やマインドが違います。我々講師や二年生の先輩に、自分から挨拶をし、お辞儀をします。たった三日間でものすごく成長します。





 二つ目は、達成感でしょうか。新入生は自分のせい一杯を出し切ります。そして、合格をもらいます。その証拠として最後にこれから二年間身に付ける名札を授与されます。その瞬間は、大きな感動を感じている表情をします。「やればできる」「自分は、やり切った」。そんな達成感を味わうことで肯定的自己概念を得るのです。



 三つめは、実は新入生のためではないのです。二年生のためです。昨年同じような辛い合宿を乗り切った二年生10人がサポーターとして参加します。教務スタッフが厳しく指導する傍らで一年生をサポートします。外に出されて泣きそうになっている一年生のケアをし、声の出し方、お辞儀の仕方などを一緒になって練習します。二年生は、献身的に全力で一年生をサポートします。一年前の自分の心境を思い出し、一年生にどのようなサポートをすれば自分は最大限役立つことができるのか、どのような声を掛ければ一年生は嬉しいのかを一生懸命考えるのです。




 四つ目は、教務スタッフや講師という学校運営を一緒になってやっていく仲間のチームビルディングです。校長が「どんな思いで学校を運営し、どんな人材育成をしたいのか」、79年もの歴史のある同校が「どんな思いでホテルパーソンを育てているのか」を共有し、みなで支え合って一年生の「ホテルスタッフに向けての第一歩」を応援する。
 一言で言うと、ここに集まるすべての人は、「まわりのために自分は何ができるのか」をひたすら考えて行動しているのです。





 お分かりでしょうか。
 この「まわりのために自分は何ができるのか」を考えることこそ、ホスピタリティなのです。このホスピタリティの空気が、合宿だけではなく学校全体に蔓延しているのが東京YMCA国際ホテル専門学校のクリティカルコア(真似できない唯一無二のWorth)です。この学校にいると自然と空気感染し、ホスピタリティがなんたるかを無意識に体感し、自分のものにしていくのです。



           160人の新入生をサポートした新二年生


 人は、完璧ではありません。むしろ、ミスをするのが当然です。そのミスを誰かがカバーする。東京YMCA国際ホテル専門学校のスタッフも、当然ミスをします。私なんてミスだらけだし、穴だらけです。でも、この学校には大きなミスは発生しません。なぜなら、だれかのミスは、周りが寄ってたかってフォローするからです。ミスを責めるのではなく、ミスを救い合うのです。
 実は、そんな組織が、一番強い。前回のブログでも書きましたが、個人個人のタスクの間にある溝や穴を埋めあうことで結束が強まるのです。どんなに優れた人材が集まっている組織といえども、この溝や穴をだれも埋めようとしない組織は弱体組織なのです。
東京YMCA国際ホテル専門学校の卒業生が、業界で高く評価され、素晴らしいホテルパーソンとして業界で活躍している根源は、この合宿にあるのです。
 


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