【19.05.22】連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ」B


連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ 〜元外資系ホテル・ファイナンシャルコントローラーによる非経理ホテルスタッフに贈る経理コラム」by 福永健司 の三回目です。

費用ってひとつじゃないの?



前回はホテルの売上についてご紹介しました。ホテルのみならず売上はビジネスの源泉です。考え方、算式としては下記の通り極めてシンプルであり、皆さんを悩ますものではないですが今後につながるホテルユニフォーム会計を考えた場合には売上を4つのカテゴリー(宿泊売上、料飲売上、ホテル付帯売上、テナント売上)に分けて計上しておくことが必要となります。


宿泊売上=宿泊平均単価×販売済み客室数
料飲売上=平均単価×入客数


前回の最後で出したクイズの答えでもありますが、筆者である私が以前、在籍したホテルでは複合リゾートホテルという性質上、様々な施設があり、例えば動物園を保有していました。平均単価×入場者数の計算式で売上を認識し、今回のテーマとなる費用の項目には「動物の購入代」や「キリンや象の餌代」などがあり驚愕したことを覚えています。

また売上についてさらに書き加えますと下記でも表現できます。


売上=平均単価×販売数×リピート数


顧客であるゲストにファンになってもらい繰り返し利用・購入してもらう、いわゆるリピート数が売上をさらに向上させるドライバーとなります。
すなわち構成要素を鑑みますと現実的には売上を増やすには

➀単価をさらに上げる
A販売数(量)を増やす
➂リピート数を増やす

のどこかに注力することが営業・マーケティング視点で判断し、実行に移すことが求められます。

売上に続き今回は費用について簡単に紹介していきます。



2つの視点で2つのカテゴリーに費用を分ける



売上を得る為に生じる必要な“ひと・もの・情報・サービス”等に対する対価を支払った場合に発生するものを費用として認識、記録していきます。
ホテルユニフォーム会計上では費用を2つの視点を用いて2つのカテゴリーに分類します。

最初の視点は”管理”という見方をします。費用の勘定科目は複数ありますが(例:人件費、食材費、交際費等)のでこれらを一定のルールに基づき適切な勘定科目に記録していくかが管理の際の肝となります。会計にはいくつかの原則がありますがその中に『継続性の原則』というものがあり、基本、一度記録先を決めた勘定科目はその使い方を継続して使い続けるというものです。記録先や記録内容がその都度違うとホテルユニフォーム会計の機能が損なわれその有効性が発揮できない可能性があります。

金額を支出した際に、費用と認識しても昨日と今日、あるいは昨年と今年に違う勘定科目を用いて記録すると最終的には整合性がとれなくなります。従って勘定科目に記録する各経費は当初に決めた内容・種類に注意し記録していくことが求められます。

またもう一つの視点としては”実態“としてその費用の性格を区分けします。特にこの見方は費用を削減するなどの具体的なアクションをとる際の目安になりえます。上述の”管理“が正しく実践されていることが前提条件となりますが勘定科目を「変動費」と「固定費」という括りで費用をカテゴライズするというものです。

「変動費」とは売上に連動する費用であり売上が高いとそれに応じて費用も増加し、売上が低いと減少するという相関関係がみられるものです。また「固定費」とは売上の大小に左右されることなく一律かかる費用のことです。どちらが良い悪いというものでなく、その性質に特徴が見られ、特に固定でない変動費については運営側の自助努力により削減が可能なものがあります。



勘定科目の内訳の代表例



ホテルユニフォーム会計の章で再度、詳細を説明しますが勘定科目の代表的なものには下記があり、その内容はホテルの考え方により多少の差はありますがおおむね同じです。

食材・飲料原価(レストラン、宴会場での食材・飲料仕入れ)
人件費(社員、パート、派遣の給与・残業・賞与などからなる)
客室清掃費(ハウスキーピング、1部屋当たりの金額)
消耗品費(運営用の各種消耗品購入費)
外注費(多岐にわたるが警備費用、施設管理費用などがある)
代理店手数料費(リアル・ネットエージェントへ支払う手数料)
旅費交通費(営業や各種出張に伴う費用)
交際費(営業的な要素に伴う費用)
広告宣伝費(各種媒体やPR費用)
水道光熱費(ホテル施設で利用するエネルギー費用)

前述、「変動費」と「固定費」ですが、シンプルな例でいえば変動費は食材・飲料原価や代理店手数料となり、固定費は社員の給与である人件費や契約で決まっている管理保守費用などとなります。

今後のコラムで触れることになります売上が思うように上がらない、あるいは外的要因(テロ、天災、疫病等)によって緊急避難的に経費削減を実施する必要が生じるのは現実的にはよくある話です。

その際に固定であり変更することが不可能(例外は除く)な費用に尽力するよりも変更可能でありホテルがコントロールできる費用(すなわち変動費)にフォーカスし、注力する方が賢明であり効果が期待できるということについては賢明な読者の皆さんもお気づきだと思います。
費用構成の算式を考慮すると単価の引き下げ、利用料もしくは利用回数の減少というのが理論的な行動計画となります。

もちろんこれにより顧客満足度が下がる、ホテルの評価が毀損する、スタッフのモチベーションが減退するということを避けた上で実践するというハードルがあるのはご承知のとおりです。



費用の割合を掴んでおく



費用の割合を大まかに掴んでおくことも大事です。

フルサービス型ホテルの大まかな目安は人件費25〜30%、運営費用(含む食材・飲料原価)20〜25%、営業関連費用10〜12%、水道光熱費で5〜8%前後となります。

こうした数値が肌感覚で分かってきますと現状への理解が深まり、ステークホルダーへの説明には厚みが増し、そして何よりご自身に自信がついてくると思います。

このあたりも今後のコラムで引き続き取り上げながら進めていきます。


【次回に向けてのクイズ】



恒例(?)のクイズです。

ホテルは労働集約型の産業であり、同時に施設・装置産業でもあります。鉄筋コンクリ―トを用いて建てた1億円のホテルが仮にあったとします。
日本の税法上、この建設費用を39年間の期間で毎年同額(1億÷39年=約250万)を費用とし、認識することになっています。これを会計・経理ではなんと呼ぶでしょうか?



ホテルユニフォーム会計のトリセツ 目次

➀売上?収入?所得?売上にまつわる話
A費用ってひとつじゃないの?
➂やっぱりこれが肝心…利益
C損益計算書にだまされるな
Dホテルユニフォーム会計の正体
Eホテルユニフォーム会計を使っていかに暴れるか?
Fホテルユニフォーム会計の導入
G数値はビジネスをする上での相棒である
Hファイナンシャルコントローラーの視点
Iファイナンシャルコントローラーの役割


【19.04.30】連載「お金をかけずに今すぐできるWEB集客」vol.12 最終回

【短期収益編】≪第12回 = 最終回 レベニューコントロール = リストリクション(販売制限)≫


宿屋大学メールマガジン読者の皆々様へ


(株) 宿援隊 & (株) 宿 力 の石井太樹です。第12回(最終回)のメールマガジンを配信させていただきます。


前回まで、主に、OTA露出、メタサーチ対策、自社ホームページ(PC&スマートフォン)露出についてお伝えしましたが、今回は、短期収益を最大化するための「レベニューコントロール = リストリクション(販売制限)」 について述べたいと思います。

言うまでもなく、ホテル・旅館は典型的な『キャパシティビジネス』 → 100室のホテルは最大でも100組のお客様しか受け入れることができません。このことは多くの方が理解しています。

ところが、101室目、102室目、103室目、110室目、150室目、200室目、300室目・・・のお客様をお断りしている(蹴飛ばしている?)ことを認識している方は少ないのではないでしょうか?

例)結果として満室の日、@5,000のお客様を取ることにより、@10,000のお客様をお断りしている可能性。

電話予約の場合はまだ「申し訳ございません。その日は満室でお部屋をご用意することができません。」などと、“断ってる感” が多少はありますが、WEB予約の場合、“断ってる感” はありませんよね?

※ホテル・旅館が、“今日の空室(在庫)を明日に持ち越せない” = 『キャパシティビジネス』なのに対し、メーカーは『非キャパシティビジネス』です。今日売れ残った商品を(生ものなどを除き)明日売ることができますし、ビールメーカーなどは季節による(需要予測による)増減産が可能です。もし、ホテル・旅館が、100室の部屋を「繁忙期だから200室に」、「閑散期だから30室に」 などとできたら、こんな楽で儲かる商売はありません。でも、そんなことできませんよね?

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そんな販売個数(室数)の上限が決まっている『キャパシティビジネス』において、売上・利益を最大化する手法が、俗にいう『レベニューマネジメンント』なのですが、昨今、(某チェーンホテルのおかげで???)その『レベニューマネジメント』が“価格の上げ下げ” あるいは “価格の吊り上げ” と理解されてしまっている節がありますので、ここでは『レベニューマネジメント』を❶価格コントロール と ❷リストリクション(販売制限) の2つに分けて語りたいと思います。


❶価格コントロール

業界内で『レベニューマネジメント』あるいは『イールドマネジメント』と呼ばれていたりします。(正確には後述する❷リストリクションも含めて『レベニューマネジメント』なのですが・・・)

これは、
◆需要予測により販売価格を設定
◆需要予測より実際の予約入込み(オンハンド)がいい場合、販売価格を上げていく
 ※実作業としては、サイトコントローラー(TLリンカーン、手間いらず、ねっぱん!、らく通 等)で、例えばシーズナリティ「C」で¥10,000だった価格を、入込みがいいので、「D」にし、¥11,000にするということになります。

この価格コントロールをする上で、大事な点は2つです。

(1) 必ず “早得遅損” にすること
→いくら予約入込み(オンハンド)が悪いからといって、直近で販売価格を下げるのは愚の骨頂です。
    直近で価格を下げる場合のリスクは以下の通りです。
  ■予約の “乗換え” が発生する
   例)¥10,000で入っていた予約がキャンセルになり、¥8,000で取り直される
     (これはプラス¥8,000ではなく、マイナス¥2,000)
  ■SNSで呟かれる
   例)『●●ホテル、毎日恒例の当日値下げ!』などと呟かれたら、それがその
     ホテルの認知・ブランドになってしまい、先予約が入りづらくなり、更なる
     値下げを余儀なくされてしまいます。
  ■なにより、既存予約者への背信(バレても、バレなくても)
   ⇒リピーターが付きにくくなります。 
  
航空業界は、この “早得遅損” を徹底しています。当日、多数の空席があったとしても、価格を下げたりしません。当日は割高な普通運賃のみです。

とはいえ、実際にスカスカなわけで、価格を下げないことには、どうしようもない というケースもありますよね?

そんな時には、既存プランの価格を下げるのではなく、予め商品クオリティが下がる『リカバリープラン』を準備しておき、それを新たに販売開始するのです。この『リカバリープラン』の典型例は、チェックインやチェックアウトの時刻が通常と異なる「ショートステイプラン」や、「ROH(Run of the House)」 = 部屋タイプホテルお任せ(お客様の側で客室タイプを選べない) などですし、旅館においては、「1泊朝食」や「素泊り」プランがリカバリープランになりがちです。

例)土曜日の旅館、販売している1泊2食プランだけではなかなか予約が入ってこない
 ×その1泊2食プランを値下げ
 〇新たに1泊朝食や素泊りプランを販売開始

(2) 社会性のある範囲で

需要予測と実際の予約入込み(需要と供給のバランス)で価格を決めるのが、レベニューマネジメントの中の価格コントロールなのでしょうが、やり過ぎるのはいかがなものでしょうか?

例えば、11uのシングルルーム¥50,000 などというのは、やり過ぎかと・・・。所有者がファンドで、短期利益だけを追求するのならともかく、親の代、祖父母の代、さらにその前の代からホテル・旅館ビジネスを継承していたり、あるいは子供の代、孫の代、100年先まで継承させたい と考えるのなら、社会性を鑑みないといけません。“人の足元を見る” “ボッタクリ” 商売は永続性に欠けます。


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❷リストリクション(販売制限)

リストリクション(販売制限)とは、すなわち “お客様を選ぶ” ことです。前述したとおり、ホテル・旅館は典型的な「キャパシティビジネス」 ⇒ 100室のホテルは、最大でも100組のお客様しか受け入れられない ビジネスです。そのような条件下、売上・利益を最大化するために、❶で述べた「価格コントロール」も大事なのですが、やり過ぎると社会性を欠き、“ボッタクリホテル(旅館)” の認知がされてしまいます。

そこで、社会性を保ちながら = “ボッタクリ” にならずに、売上・利益を最大化する手法が「リストリクション(販売制限)」 = “お客様を選ぶ” なのです。

では、どうやって “お客様を選ぶ” のか?
大きく3つあります。


(1) 同伴係数 = 一室人数 による販売制限

 例えば、定員4名の和室12畳のお部屋。閑散日であれば、一室1名や2名のゲストも
 大歓迎です。反対に、GWや夏休み、年末年始などの繁忙日は、一室1名や2名の
 ゲストはunwelcome・・・
 できれば、定員通り4名で入れたい というのがホンネですよね?
 客室売上だけでなく、飲食、お土産などミスク売上もあがりますし・・・
 そこで、繁忙日は「4名一室でしか売らない」という設定が必要となります。
 実作業は、サイトコントローラー上で、例えばシーズナリティ「E」を設定するだけ
 でなく、「E-1」「E-2」「E-3」「E-4」と細かく設定します。
 「E-4」は4名一室のみで販売(1〜3名一室は料金を持たない)という具合です。
 この一室人数のコントロール(販売制限)が最も売上・利益に寄与するばかりでなく、
 最もリスクのない販売制限です。なぜなら、グループサイズが大きくなればなるほど、
 リードタイムは長くなり、小さくなればなるほど、短くなる(直近予約 が多くなる)
 からです。
 貴方が100名の団体旅行の幹事をやったら、半年前から計画するでしょうが、1人旅なら
 今からだって行けますよね? 4名一室だけで販売し、もし入ってこなかったら3名
 一室を開ける。それでも入ってこなかったら2名一室を開ける。
 反対に、2名一室が入り過ぎてしまったら閉める・・・こんなコントロールが必要です。
 因みに、この一室人数による販売制限は、なにも旅館に限ったことではなく、大手ビジ
 ネスホテルチェーンなども週末を中心に、日常的にやっております。ダブルルーム1名
 一室¥10,000より、2名一室@7,000×2=¥14,000の方がオイシイですから・・・。


(2) 宿泊プラン “松竹梅”

 例えば、閑散日であれば、素泊りや1泊朝食のゲストも大歓迎ですよね?
 でも、繁忙日は1泊2食、それも “松竹梅” の「松」で販売したいですよね??
  一室人数の販売制限同様、繁忙日は「松」だけで売る、「松」と「竹」だけで売る、「松」と「竹」と「梅」だけで売る、
  入込みが芳しくないので1泊朝食や素泊りを開放する、入り過ぎたので閉める などというコントロールです。


(3) 販売チャネル制限

 販売チャネル制限については、下記の内、どちらかの条件を満たしていることが
 大前提となります。

 ◆大手OTAにおける上位表示(365日 常に上位20%に掲載)※第5回のメルマガ参照
  ⇒大手OTAの上位表示が取れていれば、上位表示を取る分だけOTAで稼ぎ、
   あとは根こそぎ自社予約へ誘導したい!
 ◆稼働率90〜95%超
  ⇒地域や施設にもよりますが、稼働が90〜95%を超えると、事実上売るところはない
   ですよね? かといって、設備投資をしない限り単価UPにも限界がある・・・  
   (“ボッタクリ” は避けたい・・・)
   であれば、手数料率が高い販売チャネルを制限することで、たとえ売上が同じで
   も、より多くの利益を残すことができます。

 貴方のホテル・旅館が、上記いずれかの条件を満たしているのであれば、

 「海外OTA」(手数率料12〜20%) → 「国内OTA」(手数料率8〜12%) →
 「自社直」(手数料ナシ)

 というふうに販売チャネルを絞っていきます。

 具体的には、「閑散日は全チャネルで売る」、「繁忙日は(上位表示を維持するため
 に)国内OTAと自社直だけで売る」、「最後の5室は自社直だけで売る」といった
 チャネル戦略が必要です。
 ただし、クドイようですが、この販売チャネル制限については、「大手OTAにおける
 上位表示」 または 「稼働率90〜95%超」 のいずれかが大前提となります。

 いずれの条件も満たさないまま、自社戦略を採ると、「自社比“率”」だけが上がり、
 「WEB予約総“額”」が上がらなくなってしまいます。ビジネスにおいては、
 “率” と ”額“ を混同(勘違い)せず、分けて考えることが必要です。

 上記3つのリストリクション(販売制限) = 「一室人数」、「宿泊プラン“松竹
 梅”」、「販売チャネル」は、繁忙日にホテル・旅館側が「お客様を選んでいる」
 だけで、けっして、“ボッタクリ” ではないですよね?

 例)繁忙日、2名一室のゲストより、4名一室のゲストを優先して取る
  ⇒客室売上は上がるが、1人あたりの単価は妥当な金額
   繁忙日、1泊2食「梅」のゲストより、「松」のゲストを優先して取る
  ⇒ 単価も上がるが、よりクオリティの高い商品(夕食)が提供される


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収益アップのために、単価アップは不可欠ですが、単価を上げる際に注意したいのは、「顧客満足度(CS)」、「クチコミ」を下げないことです。不当に高い価格設定は、確かに短期的な利益をもたらしますが、顧客満足度が下がり、商売の継続性・永続性を考えれば???です。

でも、リストリクション(販売制限) = 繁忙日に “お客様を選ぶ” やり方であれば、顧客満足度は悪くても現状維持、単価は上がっても、クオリティの高い商品が提供されることになるので、顧客満足度が上がる可能性すらあります。




これまで全12回にわたりメールマガジンを配信してきました。
読者の皆様にはご購読いただき誠にありがとうございました。(途中、間が空いてしまったことも多々あり、申し訳ございませんでした。)

もしよろしければ、これまでのバックナンバー
http://www.yadoyadaigaku.com/info/data1/171006-081601.html
もご覧ください。

きっと、皆様のホテル・旅館の収益向上にお役に立てるヒントがあろうかと思われます。



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“WEB集客とレベニューコントロールのプロ集団”
株式会社 宿援隊 代表取締役
株式会社 宿 力 取 締 役
石井 太樹
 http://yado-riki.com/
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【19.04.08】連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ」A


新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ 〜元外資系ホテル・ファイナンシャルコントローラーによる非経理ホテルスタッフに贈る経理コラム」by 福永健司 の二回目です。



売上?収入?所得?売上にまつわる話

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あなたはご自身のホテル、あるいは部門(ここでいう部門とは宿泊やレストラン、あるいは宴会のことです。またあなたが営業担当なら営業部門、人事なら人事部門のことです)の損益計算書(ある期間におけるホテルや部門の業績結果を見せる“一覧表”だとここでは思ってください)を見たことはありますか?

“ホテルはサービス業の王様”と言われた時期もあり、とかくホテルといえば「おもてなし」や「サービス」の優劣によって評価が決まると思われがちですが、ホテルもビジネスですので、「儲かった」、「儲からなかった」というビジネスとして当然の評価があります。

顧客満足度という指標はもちろん大事ですが、この一点のみに焦点を絞ると、極論「利益を無視してお客さまに尽くしなさい」ということになりかねません。ホテルの財務・経済的利益を追求しながら、ゲストにもホテルスタッフにも、オーナーや株主など、関係者すべてに満足していただくのは簡単ではありませんが、現実はこれらのバランスを取りながらホテルを運営することを求められています。

このバランスについてはこのコラムの後半で触れることになりますが、まずはホテルの経済的業績を測り、それを端的にステークホルダー(ここでは総支配人、部門長、スタッフ、ホテルオーナーを指します)に指し示す損益計算書という指標について紹介していきます。




「ホテルユニフォーム会計」ってなに?

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今回のコラムの表題にもなっています“ホテルユニフォーム会計”とは、前述する損益計算書のことです。そして、より正しく表現するとしたら「部門別版の損益計算書」であり、このようにここではご理解下さい。

何度も申し上げますが、私は文系出身で、算数はもとより計算が嫌いで苦手です。難しい数値的な要素が羅列されているのを見るだけで嫌になります。ゆえに本コラムでは、順を追って、可能な限り容易に理解できる様に説明をしていきたいと思います。


早速ですが、「損益計算書を10秒で説明しなさい」と言われたとしたら、どう答えるか。

答えは、「売上−費用=利益」です。


売上が100で費用(経費)が70なら利益は30(100−70=30)。
これだけなのです。



売上、費用、利益には種類がある


数式は、ご覧いただいた通り、たんなる引き算ですので、怯むことなく理解ができると思います。悩ましいのは売上、費用、利益には種類があり、また数値も100や70といった単純なものではなく、桁表示が百万、千万、億はたまた兆になり、端数も存在することです。だから複雑に見えたりするのです。これを防ぐため、ここでは最初は便宜的に簡単な数値を用い、説明をしていきます。

個人が法人(会社)からもらう給与などを“収入”と呼び、収入から個人の税金を算出するにあたり一定の控除を受けた後の部分を“所得”と呼びます。“売上”とは商品やサービスなどの対価と定義づけられていますので今回取り扱っていくのは売上となります。


ホテルの売上とは何でしょう?

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フルサービス型のホテルであれば宿泊売上、レストラン売上、宴会売上(一般宴会と婚礼売上に大別されることがある)、そしてホテル付属設備による売上(スパ、スポーツクラブ、売店、駐車場等)、あるいはテナント売上(ホテルの一部を外部に貸していることによる家賃売上)があり、宿泊特化型(ビジネスホテル)であれば基本、宿泊売上のみということになります。


売上の構成要素に注意


ホテルの2大売上は宿泊と料飲(レストラン+一般宴会+婚礼)ですが、これらの売上を構成する要素は、それぞれ平均客室単価と販売済み客室数と平均単価と入客数となり、これを算式にすると・・・


宿泊売上=宿泊平均単価(=Average Daily Rate(ADR))×販売済み客室数


となります。例としては10,000円のADRのホテルで10室販売できれば100,000円(10万円)の宿泊売上となります。

料飲売上=平均単価×入客数となります。

こちらは5,000円の平均単価で100名の入客あると500,000円(50万円)の料飲売上となります。

と大変シンプルな話です。

これもコラム後半にふれますがこのシンプルな計算式が営業・マーケティング的に考えますといろいろな意味を持ってきます。

                             (コラムA終わり)


【次回に向けてのクイズ】

過去、私(福永)が、財務会計担当者として関わったあるホテルで、非常にユニークな売上がありました。さて、どんな売上だったでしょうか? 

そこは複合リゾートでコラム中にあった宿泊、料飲の他に付属設備があったのです。スパやジムなどはよく見ますがホテルとは直接関係ないのですが便宜的にホテル内の経理に取り込まれていました。さて、何の売上だったでしょうか? 私自身も見たのは後にも先にもここのリゾートホテルだけでした。

答えは次回のコラムにてお伝えします。ぜひ、次回もご覧ください。


PHM講座の卒業生たち

宿屋大学の看板講座である「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」の卒業生の多くは日本のホテル業界を牽引するホテリエになり、大いに活躍しています。総支配人になっている人もいれば、社長になっている人もいます。

そうした卒業生をインタビュー。
月一回のペースで紹介していきたいと思います。

Vol.1「ホテルインターゲート東京 京橋」 総支配人 上田慎氏

Vol.2 長崎自動車(株)取締役 兼 長崎バスホテルズ(株)常務取締役 兼 運営会社3社 代表取締役社長 久野 隆紹氏




【19.03.19】新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ」@


新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ 〜元外資系ホテル・ファイナンシャルコントローラーによる非経理ホテルスタッフに贈る経理コラム」by 福永健司 の一回目です。


数値=相棒

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筆者である私は文系出身で大学卒業時はスポーツインストラクターとして社会人になりました。数学はもとより自他ともに認める数値、数字が苦手、というより嫌いでした。
そうした背景があるので数値や数字に苦手意識をもつホテリエの気持ち、心情を理解します。私も数値が苦手な皆さんと同じ一人だったからです。

「数字はそもそも苦手だし、分からない」、「ゲストのことを考え最高のサービスを提供することこそが仕事である」、「数値は面倒である、出来るだけ数値より離れていたい」等々。ホテルに入った当時の私の偽りのない気持ちです。

しかしながら現在のホテル業界を取り巻く環境はホテルオーナーにファンドや不動産も多く金融商品あるいは投資の一部としてホテルが存在します。このコラムを読む皆さんの仕事としての立ち位置はそれぞれでしょうが、こうしたホテルオーナーとのやり取りには共通言語、すなわち“数値”でのコミュニケーションが不可欠です。またそれとは関係なく自身が日々、行なっている(ゲストをケアし、上司や同僚とやりとりし、部下を鼓舞する)仕事の結果を測るものの多くは“数値”に置き換えられます。

お気づきになっている方は多いと思いますが、あなたが苦手で嫌いでもホテルは実に多くの“数値”に囲まれて日々の運営を行なっています。そしてこれらの“数値”がゲスト満足や従業員満足、そしてオーナー満足、もっと言えばご自身の満足に繋がっているのです。

数値がすべてとはいいませんが密接に関係するこの数値という相棒と上手く付き合う必要があります。またポジションが何であろうと、ホテルに働いている・働いていない等とは関係なく、一人のビジネスマン(ウーマン)としてこの“相棒”を理解し活用することが自身のビジネスへの理解を強くします。


ホテルユニフォーム会計という名称を聞いたことはありますか?

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よくある間違いで、ユニフォームという名称から“制服”と混同し、「制服と会計になんの関係があるの?」という質問を受けた、冗談なような本当の経験もあります。

平たくいえば、ホテルユニフォーム会計とは、ホテル業績のレントゲン写真です。皆さんが日々実践する運営パフォーマンスの成績表を“部門別に”数字で表現したものです。

このコラムでは、学術的にいちから借方・貸方(経理・簿記用語)を学び、損益計算書(儲かったか、損したかが分かる経理資料)、そしてホテルユニフォーム会計に基づく計算書を作成するということはしません。

それよりもより実践に使えるよう、損益計算書やホテルユニフォーム会計の概要・概略とその活用方法を中心に今コラムにて紹介します。

一人でも多くの非(並びに現)経理ホテルスタッフが経理や数値に興味を持ち、それぞれが“相棒”と共にビジネスマンとして日々を生き抜く参考になれば幸いです。


【19.03.19】新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ 〜元外資系ホテル・ファイナンシャルコントローラーによる非経理ホテルスタッフに贈る経理コラム」by 福永健司

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ホテルの関係者全員が、同じ基準でそのホテルの運営パフォーマンスの成績が分かる全世界共通のモノサシが、「ホテルユニフォーム会計」です。ホテルのグローバリゼーション(ヒトやモノやカネが国境を越えてビジネスが展開される状態)が加速し、ホテルを持つ企業と運営する企業がどんどん分かれていく昨今、いろんな関係者(ステークホルダー)とのコミュニケーションに、この「ホテルユニフォーム会計」が必要になっていますし、今後、この会計基準でPLを作成せざるを得ないホテルや旅館も増えてくることが予想されます。

そうした環境を見据え、宿屋大学は、PHM講座で毎回「ユニフォーム会計」を講義下さる福永健司氏に連載を依頼。隔週で、「ホテルユニフォーム会計」の基礎知識から、導入手順まで詳しく紹介していただきます。


【連載】

 プロローグ 「数値=相棒」
 第二回 売上?収入?所得?売上にまつわる話
 第三回 費用ってひとつじゃないの?




【目次】(予定)

➀売上?収入?所得?売上にまつわる話
A費用ってひとつじゃないの?
➂やっぱりこれが肝心…利益
C損益計算書にだまされるな
Dホテルユニフォーム会計の正体
Eホテルユニフォーム会計を使っていかに暴れるか?
Fホテルユニフォーム会計の導入
G数値はビジネスをする上での相棒である
Hファイナンシャルコントローラーの視点
Iファイナンシャルコントローラーの役割


【福永健司氏のプロフィール】
 http://www.yadoyadaigaku.com/koushi/fukunaga.html

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【19.02.12】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.95)「研修を成功に導く6つの要素」

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企業の経営者や人事担当者と話していて、ときどきがっかりする発言を聞かされます。「研修なんてやっても、人なんて変わるもんじゃない」という発言です。そういう発言を耳にするとき、私は心の中で、こう思うのです。

「研修では何も変わらないと主張する人は、研修の取り組み方が間違っているだけ」

確かに、安直に「研修すれば、行動変容が生まれるに違いない」と考えて取り組むだけでは徒労に終わることが多いです。でも、研修を成果に繋げるポイントを理解して、そこを確実に押さえていけば、かなりの確率で研修生の成長と現場の変化は見られます。現に、宿屋大学が主催する「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」(以降、PHM講座)の卒業生は、8カ月間の受講を修了されると、ホテルマネジャーとしてのノウハウとスキルとマインドを身に着けます。そして、卒業生の多くが実力あるホテル総支配人に就任し、なかには社長になっている人もいます。

PHM講座を始めて8年になります。その間、講座の内容や取り組みに関して、毎年工夫を重ねてきました。そして、今現在、大きな手応えを感じています。

研修を成果に繋げるには、次の6つの要素があると感じています。

@ 本人の意欲と努力
A 本人の学力
B 講師&講義内容の質
C 成長・成果に繋げる工夫
D 事務局の伴走
E 経営者や職場の理解と支援

そして、これらの一つでも欠けてしまったら研修の成果は激減してしまうのです。本ブログでは、この6つを解説してみたいと思います。




@本人の意欲と努力

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これは、研修の大前提です。しぶしぶ研修をやらされているというスタンスで参加する研修者が、成長することはほとんどありません。どんなに美味しい料理でも、満腹時には美味しく感じないのと同様に、どんなに優れた研修でも、勉強したくない人に押し付けても、まったく効果はないのです。

さすがに、しぶしぶ感を表情に出して研修を受ける方はほとんどお目にかかりませんが、もしそういう人がPHM講座を受講されようとしたら、お断りします。研修費や時間の無駄になるだけではなく、クラスの空気を壊すし、本気で学ぼうとしているクラスメイトの迷惑になるからです。

ただし、いまひとつ乗り気になれない研修者に事務局が働きかけてエンジンに火をつけることは可能です。ここは事務局の努力というよりは、クラスの空気感が大いに影響します。消極的な研修者が、前のめりで受講しているクラスメイトの姿を間近で見て、「自分も頑張らねば」という気持ちになっていく様子を私は数多く見てきています。本気で学んでいるクラスメイトに、みんなが引き上げられていくのです。クラスの雰囲気がそうさせています。その意味では、こうした盛り上げる演出や、活気ある雰囲気づくりは事務局の腕の見せ所だといえます。

もう一つ、意欲を維持するために必要なことがあります。ゴール設定です。何のために研修を受けるのか、研修後どうなっていたいのか、なりたい自分の姿はどのようなものかを、研修前にイメージすることです。宿屋大学では、研修前に、受講の目的と受講後のありたい姿をエッセイとして提出してもらったり、決意表明をプレゼンしたりレポートしてもらっています。そうやって「宣言」してもらうことで、自分自身と約束をさせ、共に学ぶクラスメイトに自分の覚悟を露出するのです。半強制的に、やらざるを得ない環境を作ってしまうことで、結果、本人の意欲と頑張りを引き出すことは大いに可能です。


A本人の学力

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学力とは、偏差値の高さとは違います。書いて字のごとく「学ぶ力」です。吸収力といってもいいかもしれません。学生時代、自分の勉強のスタイルを築き、何かをインプットしたり、マスターしたりすることになれている人は、成長が早いです。研修のクラスの前に、事前の予習をしっかりやったり、自分なりの方法でノートをとったり、復習を繰り返したりして、学びを自分の智恵にすることになれている人は、そうでない人に比べて成長度が格段に違います。


B講師&講義内容の質


これも、当然ながら大前提の要素です。説明するまでもないですね。ただし、理論と実践を兼ね備えた講師が登壇するビジネススクールで難しいのは、「経営のプロフェッショナル」が、イコール「講師のプロフェッショナル」とは限らないということです。宿屋大学では、レクチャーによるインプットよりも、研修生が自ら考えたり、議論したり、発表したりするアウトプットによって学びを深化させる講義(「セッション」と呼んでいます)を行なっているので、講師の皆様には、レクチャラー(講師)以上にファシリテーター(学びを促す進行者)のスタンスをお願いしていますが、これはスキルが必要です。そのために、我々は慣れていない講師の先生に対しては、事務局ががっつり入って、一緒にセッションの設計をしています。


C成長・成果に繋げる工夫

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宿屋大学を法人化してはじめたころ、私は、「ビジネススクールの実力は、どれだけ優れた講師を呼べるかどうかがすべて」と勘違いしていました。上記の通り、もちろん講師や講義内容の質は大前提なのですが、それと同じくらい重要なのが、「学びを成長・成果に繋げる工夫」です。では、宿屋大学は、具体的にどのような工夫をしているか。たくさんあります。

一つは、学びをずっと持続させること。学びはクラスのセッション時間だけではなく、事前の予習や事前課題をしっかりやっていただく。そして、振り返りレポートや事後課題も提出していただきます。さらには、学んだことを職場のチームに伝えたり、実践していただくということを促しています。
二つ目は、学んだことを何度も思い出してもらうことです。人は、学んだことも、思い起こさないと、すぐに忘れてしまいます。学んだことを、自分の理解として誰かに伝えたり、実際にやってみたりして、初めて「学んだ・理解した・自分の智恵になった」と言えるのです。「分かった」と「できる」は、次元がまったく違うのです。成果という投資効果がなければ、社会人の研修というものは意味をなくします。
三つ目は、やらざるを得ない環境を作ってしまうことです。宿屋大学では、オンライン上にクラスメイトと講師と事務局のコミュニケーショングループを作り、クラス以外の時間も、ここでコミュニケーションをしていますが、セッション終了後24時間以内に、「振り返り」をアップしてもらっています。さらには、その振り返りに、クラスメイトがフィードバックのコメントを付けてもらうのです。クラス全員で、一人一人の学びと成長を伴走するイメージです。
四つ目は、最終プレゼンテーション会です。数カ月間にわたる研修の集大成として、クラスメイトや講師、そして自分を送り込んでくれた経営者や人事部長の前で、「自分はこんなことを学んだ、こんな事業を今後やっていきたい」ということをプレゼンテーションしてもらいます。
そのほかにもまだまだ成果に繋げる工夫はありますが、良質なコンテンツの提供以上に、学びをしっかり成果という投資効果に繋げる工夫はビジネススクールや研修会社のキモだと思っています。


D事務局の伴走


研修は、講師と研修者という二人の関係だけでは、その成果は限界があります。事務局が研修の伴走者、あるいはメンターになって、研修・成長・成果を目指して一緒に走ることが大切だと思っています。研修者も人間ですから壁にぶつかってへこんだり、理解ができずに落ち込んだり、怠けてしまったりすることがあります。そんなとき、励ましたり、手を引っ張ってあげたり、必要な栄養を与えてあげたりする伴走者が必要なのです。宿屋大学では、6〜7人に一人の伴走者をつけて研修の最後まで一緒に走るようにしています。クラスでのサポートやオンライン上でのやり取りだけではなく、ときには二人だけでお酒を飲んで語り合ったりします。もう、ここは、同じ業界にいる同志という間柄、深い関係性を築き、生涯お付き合いする友人になります。
さらには、その伴走者が、研修者の上司や人事担当者とコミュニケーションをして、企業と一緒に研修者の学びをサポートています。


E経営者や職場の理解と支援

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研修が失敗に終わる典型的なパターンの一つに、「研修者独りが頑張る」というケースがあります。研修者はモチベーションが高く、研修で熱くなり、大いにインプットするのですが、現場は、それにまったく関与せず、時には「この忙しいときに、なに研修なんて受けてんの。あなたの分までこっちは忙しくなっちゃたじゃない」といった感じで接すると、熱くなって帰ってきた研修者も急激に冷めてしまい、実践するどころではなくなるのです。結果、研修の成果がゼロということになります。

研修の成功を支える要素の、かなりの部分が、「職場環境」にあるといえます。上司の理解、共に働く同僚の理解が不可欠です。つまり、研修者が独りで頑張るのではなく、上司も同僚も、「みんなで頑張る!」という環境を作ることです。

そのために、宿屋大学では、研修の最中に、2〜3回、伴走者が企業や現場に出向き、上司や人事部長、現場のスタッフに会いに行って、「〇〇さんは、いま、こんなに大変な研修を受けています。そして、課題として学んだことを実践してもらったり、現場の方々にシェアしてもらったりという試みをお願いしています。どうか、〇〇さんのご支援、よろしくお願い申し上げます」と頭を下げてきます(「家庭訪問」と呼んでいます)。

企業経営において、特にホテルのようなサービス業の経営においては、人的資源という経営資源が最も大切なものです。今いるスタッフの価値を高める「研修」を、ホテル業界の経営者の皆様や人事担当者の皆様には、どうか諦めてほしくないのです。これまでやってきた研修が効果を発揮しなかったのは、やり方が違っていただけであり、地味で愚直な努力という下支えのもと、正しいアプローチとプロセスで研修を行えば、必ず人は変わります。大きな行動変容を起こし、それが企業経営にとって大きな価値を生み出してくれるのです。


【18.12.31】年末年始のご挨拶 〜年賀状に代えて

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タイムラプス



2018年の大晦日。
皆様はどのようにお過ごしでしょうか?
今年はどんな一年でしたでしょうか?

私は、案の定ですが、なんだかんだバタバタしながら、あっという間に一年の最後の日を迎えました。まるで動画を早回し再生しているかのような慌ただしさで・・・。

政府の目論見通り、今年の訪日客は3000万人を突破しました。「日本を旅する需要増」→「ホテル利用の需要増&ホテル建設ラッシュ」→「ホテル・旅館の労働力不足」→「集客やCS以上にESの重要性の増加」→「研修の需要増」・・・、こんな論理で我が宿屋大学もお仕事をたくさん頂戴しました。

週の前半(月・火・水)で大学や専門学校の講義、そして宿屋塾開催。週の後半(木・金)に出張、土曜日にPHM講座開催。こんなルーティンを繰り返した一年だったと思います。特に地方行政の観光課などからの「ホテル・旅館の経営マネジメント研修」の依頼が増え、北は青森、南は沖縄まで、私と平賀ディレクターは、毎週のように遠征を繰り返しました。


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PHM卒業生の活躍



このように忙殺される日々でしたが、手応えを感じる仕事もいくつかありました。
一つは、「プロフェッショナルホテルマネジャー(PHM)養成講座」です。今年七期を迎え、26人が受講、13人が修了されましたが、これまで7回繰り返し、そのOB・OGの皆様が業界で活躍しているということです。ホテル総支配人になっている人が続出し、なかには社長になっている人も出てきています。



ブラック職場撲滅運動



もう一つは、いつまでたってもなくならないブラックな職場を撲滅すべく、多くの識者の方にお力をいただき、この問題を考え、ブログにまとめたことです。


「ホテルにおける超人材難時代の人の育て方」


優れたホテリエを育成するという宿屋大学のミッションは、「宿泊業界人の人生の応援」という根源的な目的(私の天職)のための手段でもあり、どれだけ優秀ホテリエを育成したとしても、不幸せな業界人がいることを見逃すことは業界人の人生の応援になっていないという、言わば自己満足の意味もありました。それでも、「仕事の質も、利益も、お客さまも、もちろん大事だけれど、一緒に働く仲間の幸せも大事」であるということを再確認していただける方が少しでもいたら私のアウトプット(価値の生産)になると考えます。


そのほか、リンクホテルマネジメントというホテル運営会社を仲間と共に設立したり、立教大学観光学部のゼミ生と「とんがりホテル」という連載取材で全国のホテルを周ったり・・・、生産性向上やICT活用、外国人材活用、採用と定着といったテーマに絡めて旅館のお仕事も随分とやらせていただきました。

振り返れば、宿泊業界のご支援という仕事をさせていただいているけれど、宿屋大学は、宿泊業界の皆様に支えられて楽しく仕事ができているという結果になっているようです。宿屋大学には、「宿泊業界以外の仕事は、一切やらない」というルールがあり、どんなに美味しい儲け話でも絶対にやらないと心に決めていますが、これからも愚直に、誠実と謙虚を忘れずに取り組んでいけたらと思います。


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「PHM生は優秀」という定評をつくる



2019年、どのような年にしていきたいか・・・。
実際のところ、日ごろの仕事に忙殺されつつ、まだまだ曖昧です。
方向性としては、看板講座であるPHM講座のOB・OGの皆様が業界で活躍していますので、その方たちを引き続きご支援させていただき、ネットワークを強固にしていけたらと思います。宿屋大学の限られた経営資源(マンパワー含む)を投下するのは、手広く多くの方を対象にしたビジネスではなく、宿屋大学に集ってくれ、卒業された方々とのコミュニケーションを密にしていくという方向に投下していけたらと思います。

ホテルマネジメントにおいても資格制度が誕生していますが、「PHM卒業生は、真に実力がある」ということが業界で認知されていくことこそが、宿屋大学やPHM講座のブランディングになっていくと考えるからです。

2010年(平成22年)4月1日に創業した株式会社宿屋塾は、2019年4月に十期目を迎えます。10年前に決めた想い。

目指したいのは、「強い会社ではなく、愛される会社」という想いを引き続き持ちつつ、また明日から始まる365日を突っ走りたいと思います。

来年も、宿屋大学をどうぞよろしくお願い申し上げます。

                    株式会社宿屋塾 代表取締役 近藤寛和






追伸 枚数が際限なく増え、住所も文章も印刷するだけの賀状を送ることの価値が、SNSなどで挨拶することとほとんど変わらなく感じており、そして「年賀状を送り合う」という日本の文化・習慣も、数年には廃れてしまうのではないかと感じていることから、昨年より年賀はがきを送付することを止めています。このブログで、新年のご挨拶に代えさせていただきます。


【18.12.19】第七回「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」のMVP賞、潟pレスホテルの佐々木潤氏が受賞

安心して失敗できる場所

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2018年4月21日〜11月24日の間に開催された宿屋大学主催、第七回「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」(以下、PHM講座)のMVP賞に、株式会社パレスホテルの佐々木潤氏が選ばれた。本賞は、同講座の最終プレゼンテーション会において、「講義内容をフル活用して、経営者に向けた経営改善計画」を受講生全員が発表し、そのプレゼンテーションの内容、受講態度、成長度、クラスメイトからの評価などを審査員が点数化し、その合計得点で決められる。この度、最高得点を獲得し、MVP賞を受賞した佐々木潤氏をインタビューした。



Q PHM講座の修了、本当にお疲れ様でした。そして、MVP賞受賞おめでとうございます。まずは、今のお気持ちをお聞かせください。


私が受講の目的として設定したテーマは、「持続的成長が可能な仕組みを組織に定着させることの出来る人材を目指す」でしたが、全課程を終えたいま、その目的までの「正確な距離(遠さ)」を知ったことで、自分でマイルストーンを設定できるようになったことが収穫のひとつです。予備学習 → 事前課題 → 6時間の授業 → 振り返りレポート → 事後課題 の繰り返しで、このサイクルは正直に申し上げてハードでしたが、共に学ぶ仲間がいて、切磋琢磨するなかで、「いい加減なアウトプットはできない」というプレッシャーがあり、それがどんなに疲れていても机に向かわせてくれる原動力になりました。プレッシャーを与えてくれる仲間がいたことが、そして、生涯つながる同志を得たことが私にとって一番嬉しかったことです。見てくれている仲間がいるということは、安心であり、優しさであり、ときにそれは厳しさでした。だからこそ集まって話す話は楽しいし、共に交わすお酒が美味い。2週間に一度集まる白熱講義と飲み会が終わってしまい、一抹の寂しさがありますが、とっても楽しい7カ月間でした。


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Q 佐々木さんは、自費での受講でしたが、PHM講座を受講しようと考えたきっかけは?


私は2003年に新卒でホテルに入社し、現在38歳です。当時のホテル業界と今とでは環境が大きく変わっています。当時のホテルは所有者と運営者が同じ直営ホテルばかりでしたが、いまは不動産所有者と経営者と運営者が分かれているホテルが大半になっています。そして、いろんな人が多角的に集ってホテルという事業を支えています。その一部分のセクションからの視点だけでは全体を理解できないですし、全体を理解するためにはほかのセクションの役割や考え方を知る必要があると思ったのです。ホテル運営責任者は、投資家やオーナーのことを知る必要がありますし、私のようなマーケティング担当者は現場スタッフのことを知る必要があります。直営ホテルならば、皆が同じ立場で同じ方向性を向いて仕事をしていればよかったのですが、いろんな立場でホテル事業を支える人がいて成り立っている昨今のホテルの場合、そういった様々な役割をしっかり理解しておかなければいけないと感じたのが受講のきっかけです。


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Q 仕事とPHM講座の両立は大変だったと思いますが、その辺はどのようにやりくりしましたか。


実際、本当に大変でしたが、どのようにタイムマネジメントしたら両方をしっかり遂行できるかというのも自分に課せられた課題、試練だと受け止めていました。具体的には、毎日出勤前に一時間半、退勤後2〜3時間時間を作ってカフェなどで資料や課題図書を読みました。また、週末は課題のレポートやプレゼンテーションの資料作成に充てました。課題図書だけでは基礎知識が不足するテーマに関しては、ほかにもビジネス書を買って勉強しました。私の場合は、会社からの派遣ではなく、自分の意志での受講でしたが、それでも上司や同僚のサポートがなければここまで全力投球できなかったと思っています。また、最終プレゼンテーション会には、直属の上司だけではなく、総支配人まで応援に来てくださり、感激しました。会社には心から感謝しています。




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Q PHMを通し、ホテリエとして、ビジネスパーソンとして、どういった部分を補えたと思いますか。


リーダーシップ、ファイナンス、アセットマネジメントといった分野は、私にとっては新鮮で貴重な学びでした。一緒に学んだクラスメイトから得たことも大きいです。いろんなタイプのホテルの責任者、いろんな立場の人が集っていましたので、多様な考え方や、自社だけでは得られないアドバイスなども、大変貴重でした。また、懇親会などではお酒を飲みながら腹を割って話をし、「悩んでいるのは自分だけじゃない」という安心感も得られました。

社会人になると、失敗が許される場所というのは、それほどありません。ですが、ビジネススクールでは、失敗が許されます。どういうことかと言うと、事前課題のレポートの視点がまったくずれていたり、講師の先生が意図しているものと自分の発言が食い違っていたり、ケーススタディの問題解決の答えが間違っていたり・・・、リアルのビジネスだったら大きな傷跡になってしまいそうな失敗も安心してできるのがビジネススクールの大きな魅力であり、私がPHM講座を受講して本当に良かったと感じるポイントです。ですので、毎回、たくさん恥をかくつもりで受講していました。

また、知識を得るだけではなく、物事の考える視座なり視点なりも大きく変わったと思います。物事を大局的、そして対極的に考えられるようになったと思います。また、物事がどう展開されていくか、先を見据えて判断、アクションする癖がつきました。さらには、ロジカルシンキングの習慣も体得できたと思います。先生からは、What・Where・Why・Howというフレームワークを教わりましたが、この8カ月間、私の頭の中にはこのフレームワークがしっかり入り、この順番で物事を考えるようになれたと思っています。これも、本当に大きなことです。



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最後に、受講を検討している人にアドバイスをお願いします。


ある程度覚悟をもって参加されると良いと思います。毎回、予習があり、議論や発表を繰り返す講義があり、事後課題があります。私は、16回の講義すべてにおいて本気で臨んだので、毎回達成感を得ていました。講義後の懇親会も全て出席したのですが、そうした達成感を味わいながらのお酒は本当に美味しかったですね。例えて言うなら、16の険しい山を登っては下りを繰り返し、その度に体幹や筋力が増強されていくような、まさに脳の加圧トレーニングだったと感じています。









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