【19.03.19】新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ」@


新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ 〜元外資系ホテル・ファイナンシャルコントローラーによる非経理ホテルスタッフに贈る経理コラム」by 福永健司 の一回目です。


数値=相棒

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筆者である私は文系出身で大学卒業時はスポーツインストラクターとして社会人になりました。数学はもとより自他ともに認める数値、数字が苦手、というより嫌いでした。
そうした背景があるので数値や数字に苦手意識をもつホテリエの気持ち、心情を理解します。私も数値が苦手な皆さんと同じ一人だったからです。

「数字はそもそも苦手だし、分からない」、「ゲストのことを考え最高のサービスを提供することこそが仕事である」、「数値は面倒である、出来るだけ数値より離れていたい」等々。ホテルに入った当時の私の偽りのない気持ちです。

しかしながら現在のホテル業界を取り巻く環境はホテルオーナーにファンドや不動産も多く金融商品あるいは投資の一部としてホテルが存在します。このコラムを読む皆さんの仕事としての立ち位置はそれぞれでしょうが、こうしたホテルオーナーとのやり取りには共通言語、すなわち“数値”でのコミュニケーションが不可欠です。またそれとは関係なく自身が日々、行なっている(ゲストをケアし、上司や同僚とやりとりし、部下を鼓舞する)仕事の結果を測るものの多くは“数値”に置き換えられます。

お気づきになっている方は多いと思いますが、あなたが苦手で嫌いでもホテルは実に多くの“数値”に囲まれて日々の運営を行なっています。そしてこれらの“数値”がゲスト満足や従業員満足、そしてオーナー満足、もっと言えばご自身の満足に繋がっているのです。

数値がすべてとはいいませんが密接に関係するこの数値という相棒と上手く付き合う必要があります。またポジションが何であろうと、ホテルに働いている・働いていない等とは関係なく、一人のビジネスマン(ウーマン)としてこの“相棒”を理解し活用することが自身のビジネスへの理解を強くします。


ホテルユニフォーム会計という名称を聞いたことはありますか?

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よくある間違いで、ユニフォームという名称から“制服”と混同し、「制服と会計になんの関係があるの?」という質問を受けた、冗談なような本当の経験もあります。

平たくいえば、ホテルユニフォーム会計とは、ホテル業績のレントゲン写真です。皆さんが日々実践する運営パフォーマンスの成績表を“部門別に”数字で表現したものです。

このコラムでは、学術的にいちから借方・貸方(経理・簿記用語)を学び、損益計算書(儲かったか、損したかが分かる経理資料)、そしてホテルユニフォーム会計に基づく計算書を作成するということはしません。

それよりもより実践に使えるよう、損益計算書やホテルユニフォーム会計の概要・概略とその活用方法を中心に今コラムにて紹介します。

一人でも多くの非(並びに現)経理ホテルスタッフが経理や数値に興味を持ち、それぞれが“相棒”と共にビジネスマンとして日々を生き抜く参考になれば幸いです。


【19.03.19】新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ 〜元外資系ホテル・ファイナンシャルコントローラーによる非経理ホテルスタッフに贈る経理コラム」by 福永健司

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ホテルの関係者全員が、同じ基準でそのホテルの運営パフォーマンスの成績が分かる全世界共通のモノサシが、「ホテルユニフォーム会計」です。ホテルのグローバリゼーション(ヒトやモノやカネが国境を越えてビジネスが展開される状態)が加速し、ホテルを持つ企業と運営する企業がどんどん分かれていく昨今、いろんな関係者(ステークホルダー)とのコミュニケーションに、この「ホテルユニフォーム会計」が必要になっていますし、今後、この会計基準でPLを作成せざるを得ないホテルや旅館も増えてくることが予想されます。

そうした環境を見据え、宿屋大学は、PHM講座で毎回「ユニフォーム会計」を講義下さる福永健司氏に連載を依頼。隔週で、「ホテルユニフォーム会計」の基礎知識から、導入手順まで詳しく紹介していただきます。


【連載】

 プロローグ 「数値=相棒」


【目次】(予定)

➀売上?収入?所得?売上にまつわる話
A費用ってひとつじゃないの?
➂やっぱりこれが肝心…利益
C損益計算書にだまされるな
Dホテルユニフォーム会計の正体
Eホテルユニフォーム会計を使っていかに暴れるか?
Fホテルユニフォーム会計の導入
G数値はビジネスをする上での相棒である
Hファイナンシャルコントローラーの視点
Iファイナンシャルコントローラーの役割


【福永健司氏のプロフィール】
 http://www.yadoyadaigaku.com/koushi/fukunaga.html

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【19.02.12】今年もホテレスショーに出展します!

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□□  「ホテル・旅館収益向上委員会」が、国際ホテルレストランショーで
    必聴セミナーを18回開催します!!
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  http://www.yadoyadaigaku.com/info/data1/180131-121223.html

ホテル・旅館業を支援する5社で構成された「ホテル・旅館収益向上委員会」が、
昨年に引き続き国際ホテルレストランショー(2月19日(火)〜22日(金)
@ビッグサイト)でセミナーを開催します。

●C&RM株式会社 http://c-and-rm.com/
●株式会社アドグラフィー http://adgraphy.jp/
●株式会社キャディッシュ http://www.cadish.co.jp/
●株式会社宿力・株式会社宿援隊  https://yado-riki.com/
●株式会社宿屋塾(宿屋大学) http://yadoyadaigaku.com/index.html

それぞれの代表が、それぞれの専門分野の秘策を語ります(宿屋大学はPHM講座の説明会)。

申し込みは不要です。
当日先着順で受講できます。

ぜひ、お立ち寄りくださいませ!

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【19.02.12】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.95)「研修を成功に導く6つの要素」

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企業の経営者や人事担当者と話していて、ときどきがっかりする発言を聞かされます。「研修なんてやっても、人なんて変わるもんじゃない」という発言です。そういう発言を耳にするとき、私は心の中で、こう思うのです。

「研修では何も変わらないと主張する人は、研修の取り組み方が間違っているだけ」

確かに、安直に「研修すれば、行動変容が生まれるに違いない」と考えて取り組むだけでは徒労に終わることが多いです。でも、研修を成果に繋げるポイントを理解して、そこを確実に押さえていけば、かなりの確率で研修生の成長と現場の変化は見られます。現に、宿屋大学が主催する「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」(以降、PHM講座)の卒業生は、8カ月間の受講を修了されると、ホテルマネジャーとしてのノウハウとスキルとマインドを身に着けます。そして、卒業生の多くが実力あるホテル総支配人に就任し、なかには社長になっている人もいます。

PHM講座を始めて8年になります。その間、講座の内容や取り組みに関して、毎年工夫を重ねてきました。そして、今現在、大きな手応えを感じています。

研修を成果に繋げるには、次の6つの要素があると感じています。

@ 本人の意欲と努力
A 本人の学力
B 講師&講義内容の質
C 成長・成果に繋げる工夫
D 事務局の伴走
E 経営者や職場の理解と支援

そして、これらの一つでも欠けてしまったら研修の成果は激減してしまうのです。本ブログでは、この6つを解説してみたいと思います。




@本人の意欲と努力

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これは、研修の大前提です。しぶしぶ研修をやらされているというスタンスで参加する研修者が、成長することはほとんどありません。どんなに美味しい料理でも、満腹時には美味しく感じないのと同様に、どんなに優れた研修でも、勉強したくない人に押し付けても、まったく効果はないのです。

さすがに、しぶしぶ感を表情に出して研修を受ける方はほとんどお目にかかりませんが、もしそういう人がPHM講座を受講されようとしたら、お断りします。研修費や時間の無駄になるだけではなく、クラスの空気を壊すし、本気で学ぼうとしているクラスメイトの迷惑になるからです。

ただし、いまひとつ乗り気になれない研修者に事務局が働きかけてエンジンに火をつけることは可能です。ここは事務局の努力というよりは、クラスの空気感が大いに影響します。消極的な研修者が、前のめりで受講しているクラスメイトの姿を間近で見て、「自分も頑張らねば」という気持ちになっていく様子を私は数多く見てきています。本気で学んでいるクラスメイトに、みんなが引き上げられていくのです。クラスの雰囲気がそうさせています。その意味では、こうした盛り上げる演出や、活気ある雰囲気づくりは事務局の腕の見せ所だといえます。

もう一つ、意欲を維持するために必要なことがあります。ゴール設定です。何のために研修を受けるのか、研修後どうなっていたいのか、なりたい自分の姿はどのようなものかを、研修前にイメージすることです。宿屋大学では、研修前に、受講の目的と受講後のありたい姿をエッセイとして提出してもらったり、決意表明をプレゼンしたりレポートしてもらっています。そうやって「宣言」してもらうことで、自分自身と約束をさせ、共に学ぶクラスメイトに自分の覚悟を露出するのです。半強制的に、やらざるを得ない環境を作ってしまうことで、結果、本人の意欲と頑張りを引き出すことは大いに可能です。


A本人の学力

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学力とは、偏差値の高さとは違います。書いて字のごとく「学ぶ力」です。吸収力といってもいいかもしれません。学生時代、自分の勉強のスタイルを築き、何かをインプットしたり、マスターしたりすることになれている人は、成長が早いです。研修のクラスの前に、事前の予習をしっかりやったり、自分なりの方法でノートをとったり、復習を繰り返したりして、学びを自分の智恵にすることになれている人は、そうでない人に比べて成長度が格段に違います。


B講師&講義内容の質


これも、当然ながら大前提の要素です。説明するまでもないですね。ただし、理論と実践を兼ね備えた講師が登壇するビジネススクールで難しいのは、「経営のプロフェッショナル」が、イコール「講師のプロフェッショナル」とは限らないということです。宿屋大学では、レクチャーによるインプットよりも、研修生が自ら考えたり、議論したり、発表したりするアウトプットによって学びを深化させる講義(「セッション」と呼んでいます)を行なっているので、講師の皆様には、レクチャラー(講師)以上にファシリテーター(学びを促す進行者)のスタンスをお願いしていますが、これはスキルが必要です。そのために、我々は慣れていない講師の先生に対しては、事務局ががっつり入って、一緒にセッションの設計をしています。


C成長・成果に繋げる工夫

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宿屋大学を法人化してはじめたころ、私は、「ビジネススクールの実力は、どれだけ優れた講師を呼べるかどうかがすべて」と勘違いしていました。上記の通り、もちろん講師や講義内容の質は大前提なのですが、それと同じくらい重要なのが、「学びを成長・成果に繋げる工夫」です。では、宿屋大学は、具体的にどのような工夫をしているか。たくさんあります。

一つは、学びをずっと持続させること。学びはクラスのセッション時間だけではなく、事前の予習や事前課題をしっかりやっていただく。そして、振り返りレポートや事後課題も提出していただきます。さらには、学んだことを職場のチームに伝えたり、実践していただくということを促しています。
二つ目は、学んだことを何度も思い出してもらうことです。人は、学んだことも、思い起こさないと、すぐに忘れてしまいます。学んだことを、自分の理解として誰かに伝えたり、実際にやってみたりして、初めて「学んだ・理解した・自分の智恵になった」と言えるのです。「分かった」と「できる」は、次元がまったく違うのです。成果という投資効果がなければ、社会人の研修というものは意味をなくします。
三つ目は、やらざるを得ない環境を作ってしまうことです。宿屋大学では、オンライン上にクラスメイトと講師と事務局のコミュニケーショングループを作り、クラス以外の時間も、ここでコミュニケーションをしていますが、セッション終了後24時間以内に、「振り返り」をアップしてもらっています。さらには、その振り返りに、クラスメイトがフィードバックのコメントを付けてもらうのです。クラス全員で、一人一人の学びと成長を伴走するイメージです。
四つ目は、最終プレゼンテーション会です。数カ月間にわたる研修の集大成として、クラスメイトや講師、そして自分を送り込んでくれた経営者や人事部長の前で、「自分はこんなことを学んだ、こんな事業を今後やっていきたい」ということをプレゼンテーションしてもらいます。
そのほかにもまだまだ成果に繋げる工夫はありますが、良質なコンテンツの提供以上に、学びをしっかり成果という投資効果に繋げる工夫はビジネススクールや研修会社のキモだと思っています。


D事務局の伴走


研修は、講師と研修者という二人の関係だけでは、その成果は限界があります。事務局が研修の伴走者、あるいはメンターになって、研修・成長・成果を目指して一緒に走ることが大切だと思っています。研修者も人間ですから壁にぶつかってへこんだり、理解ができずに落ち込んだり、怠けてしまったりすることがあります。そんなとき、励ましたり、手を引っ張ってあげたり、必要な栄養を与えてあげたりする伴走者が必要なのです。宿屋大学では、6〜7人に一人の伴走者をつけて研修の最後まで一緒に走るようにしています。クラスでのサポートやオンライン上でのやり取りだけではなく、ときには二人だけでお酒を飲んで語り合ったりします。もう、ここは、同じ業界にいる同志という間柄、深い関係性を築き、生涯お付き合いする友人になります。
さらには、その伴走者が、研修者の上司や人事担当者とコミュニケーションをして、企業と一緒に研修者の学びをサポートています。


E経営者や職場の理解と支援

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研修が失敗に終わる典型的なパターンの一つに、「研修者独りが頑張る」というケースがあります。研修者はモチベーションが高く、研修で熱くなり、大いにインプットするのですが、現場は、それにまったく関与せず、時には「この忙しいときに、なに研修なんて受けてんの。あなたの分までこっちは忙しくなっちゃたじゃない」といった感じで接すると、熱くなって帰ってきた研修者も急激に冷めてしまい、実践するどころではなくなるのです。結果、研修の成果がゼロということになります。

研修の成功を支える要素の、かなりの部分が、「職場環境」にあるといえます。上司の理解、共に働く同僚の理解が不可欠です。つまり、研修者が独りで頑張るのではなく、上司も同僚も、「みんなで頑張る!」という環境を作ることです。

そのために、宿屋大学では、研修の最中に、2〜3回、伴走者が企業や現場に出向き、上司や人事部長、現場のスタッフに会いに行って、「〇〇さんは、いま、こんなに大変な研修を受けています。そして、課題として学んだことを実践してもらったり、現場の方々にシェアしてもらったりという試みをお願いしています。どうか、〇〇さんのご支援、よろしくお願い申し上げます」と頭を下げてきます(「家庭訪問」と呼んでいます)。

企業経営において、特にホテルのようなサービス業の経営においては、人的資源という経営資源が最も大切なものです。今いるスタッフの価値を高める「研修」を、ホテル業界の経営者の皆様や人事担当者の皆様には、どうか諦めてほしくないのです。これまでやってきた研修が効果を発揮しなかったのは、やり方が違っていただけであり、地味で愚直な努力という下支えのもと、正しいアプローチとプロセスで研修を行えば、必ず人は変わります。大きな行動変容を起こし、それが企業経営にとって大きな価値を生み出してくれるのです。


【18.12.31】年末年始のご挨拶 〜年賀状に代えて

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タイムラプス



2018年の大晦日。
皆様はどのようにお過ごしでしょうか?
今年はどんな一年でしたでしょうか?

私は、案の定ですが、なんだかんだバタバタしながら、あっという間に一年の最後の日を迎えました。まるで動画を早回し再生しているかのような慌ただしさで・・・。

政府の目論見通り、今年の訪日客は3000万人を突破しました。「日本を旅する需要増」→「ホテル利用の需要増&ホテル建設ラッシュ」→「ホテル・旅館の労働力不足」→「集客やCS以上にESの重要性の増加」→「研修の需要増」・・・、こんな論理で我が宿屋大学もお仕事をたくさん頂戴しました。

週の前半(月・火・水)で大学や専門学校の講義、そして宿屋塾開催。週の後半(木・金)に出張、土曜日にPHM講座開催。こんなルーティンを繰り返した一年だったと思います。特に地方行政の観光課などからの「ホテル・旅館の経営マネジメント研修」の依頼が増え、北は青森、南は沖縄まで、私と平賀ディレクターは、毎週のように遠征を繰り返しました。


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PHM卒業生の活躍



このように忙殺される日々でしたが、手応えを感じる仕事もいくつかありました。
一つは、「プロフェッショナルホテルマネジャー(PHM)養成講座」です。今年七期を迎え、26人が受講、13人が修了されましたが、これまで7回繰り返し、そのOB・OGの皆様が業界で活躍しているということです。ホテル総支配人になっている人が続出し、なかには社長になっている人も出てきています。



ブラック職場撲滅運動



もう一つは、いつまでたってもなくならないブラックな職場を撲滅すべく、多くの識者の方にお力をいただき、この問題を考え、ブログにまとめたことです。


「ホテルにおける超人材難時代の人の育て方」


優れたホテリエを育成するという宿屋大学のミッションは、「宿泊業界人の人生の応援」という根源的な目的(私の天職)のための手段でもあり、どれだけ優秀ホテリエを育成したとしても、不幸せな業界人がいることを見逃すことは業界人の人生の応援になっていないという、言わば自己満足の意味もありました。それでも、「仕事の質も、利益も、お客さまも、もちろん大事だけれど、一緒に働く仲間の幸せも大事」であるということを再確認していただける方が少しでもいたら私のアウトプット(価値の生産)になると考えます。


そのほか、リンクホテルマネジメントというホテル運営会社を仲間と共に設立したり、立教大学観光学部のゼミ生と「とんがりホテル」という連載取材で全国のホテルを周ったり・・・、生産性向上やICT活用、外国人材活用、採用と定着といったテーマに絡めて旅館のお仕事も随分とやらせていただきました。

振り返れば、宿泊業界のご支援という仕事をさせていただいているけれど、宿屋大学は、宿泊業界の皆様に支えられて楽しく仕事ができているという結果になっているようです。宿屋大学には、「宿泊業界以外の仕事は、一切やらない」というルールがあり、どんなに美味しい儲け話でも絶対にやらないと心に決めていますが、これからも愚直に、誠実と謙虚を忘れずに取り組んでいけたらと思います。


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「PHM生は優秀」という定評をつくる



2019年、どのような年にしていきたいか・・・。
実際のところ、日ごろの仕事に忙殺されつつ、まだまだ曖昧です。
方向性としては、看板講座であるPHM講座のOB・OGの皆様が業界で活躍していますので、その方たちを引き続きご支援させていただき、ネットワークを強固にしていけたらと思います。宿屋大学の限られた経営資源(マンパワー含む)を投下するのは、手広く多くの方を対象にしたビジネスではなく、宿屋大学に集ってくれ、卒業された方々とのコミュニケーションを密にしていくという方向に投下していけたらと思います。

ホテルマネジメントにおいても資格制度が誕生していますが、「PHM卒業生は、真に実力がある」ということが業界で認知されていくことこそが、宿屋大学やPHM講座のブランディングになっていくと考えるからです。

2010年(平成22年)4月1日に創業した株式会社宿屋塾は、2019年4月に十期目を迎えます。10年前に決めた想い。

目指したいのは、「強い会社ではなく、愛される会社」という想いを引き続き持ちつつ、また明日から始まる365日を突っ走りたいと思います。

来年も、宿屋大学をどうぞよろしくお願い申し上げます。

                    株式会社宿屋塾 代表取締役 近藤寛和






追伸 枚数が際限なく増え、住所も文章も印刷するだけの賀状を送ることの価値が、SNSなどで挨拶することとほとんど変わらなく感じており、そして「年賀状を送り合う」という日本の文化・習慣も、数年には廃れてしまうのではないかと感じていることから、昨年より年賀はがきを送付することを止めています。このブログで、新年のご挨拶に代えさせていただきます。


【18.12.19】第七回「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」のMVP賞、潟pレスホテルの佐々木潤氏が受賞

安心して失敗できる場所

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2018年4月21日〜11月24日の間に開催された宿屋大学主催、第七回「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」(以下、PHM講座)のMVP賞に、株式会社パレスホテルの佐々木潤氏が選ばれた。本賞は、同講座の最終プレゼンテーション会において、「講義内容をフル活用して、経営者に向けた経営改善計画」を受講生全員が発表し、そのプレゼンテーションの内容、受講態度、成長度、クラスメイトからの評価などを審査員が点数化し、その合計得点で決められる。この度、最高得点を獲得し、MVP賞を受賞した佐々木潤氏をインタビューした。



Q PHM講座の修了、本当にお疲れ様でした。そして、MVP賞受賞おめでとうございます。まずは、今のお気持ちをお聞かせください。


私が受講の目的として設定したテーマは、「持続的成長が可能な仕組みを組織に定着させることの出来る人材を目指す」でしたが、全課程を終えたいま、その目的までの「正確な距離(遠さ)」を知ったことで、自分でマイルストーンを設定できるようになったことが収穫のひとつです。予備学習 → 事前課題 → 6時間の授業 → 振り返りレポート → 事後課題 の繰り返しで、このサイクルは正直に申し上げてハードでしたが、共に学ぶ仲間がいて、切磋琢磨するなかで、「いい加減なアウトプットはできない」というプレッシャーがあり、それがどんなに疲れていても机に向かわせてくれる原動力になりました。プレッシャーを与えてくれる仲間がいたことが、そして、生涯つながる同志を得たことが私にとって一番嬉しかったことです。見てくれている仲間がいるということは、安心であり、優しさであり、ときにそれは厳しさでした。だからこそ集まって話す話は楽しいし、共に交わすお酒が美味い。2週間に一度集まる白熱講義と飲み会が終わってしまい、一抹の寂しさがありますが、とっても楽しい7カ月間でした。


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Q 佐々木さんは、自費での受講でしたが、PHM講座を受講しようと考えたきっかけは?


私は2003年に新卒でホテルに入社し、現在38歳です。当時のホテル業界と今とでは環境が大きく変わっています。当時のホテルは所有者と運営者が同じ直営ホテルばかりでしたが、いまは不動産所有者と経営者と運営者が分かれているホテルが大半になっています。そして、いろんな人が多角的に集ってホテルという事業を支えています。その一部分のセクションからの視点だけでは全体を理解できないですし、全体を理解するためにはほかのセクションの役割や考え方を知る必要があると思ったのです。ホテル運営責任者は、投資家やオーナーのことを知る必要がありますし、私のようなマーケティング担当者は現場スタッフのことを知る必要があります。直営ホテルならば、皆が同じ立場で同じ方向性を向いて仕事をしていればよかったのですが、いろんな立場でホテル事業を支える人がいて成り立っている昨今のホテルの場合、そういった様々な役割をしっかり理解しておかなければいけないと感じたのが受講のきっかけです。


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Q 仕事とPHM講座の両立は大変だったと思いますが、その辺はどのようにやりくりしましたか。


実際、本当に大変でしたが、どのようにタイムマネジメントしたら両方をしっかり遂行できるかというのも自分に課せられた課題、試練だと受け止めていました。具体的には、毎日出勤前に一時間半、退勤後2〜3時間時間を作ってカフェなどで資料や課題図書を読みました。また、週末は課題のレポートやプレゼンテーションの資料作成に充てました。課題図書だけでは基礎知識が不足するテーマに関しては、ほかにもビジネス書を買って勉強しました。私の場合は、会社からの派遣ではなく、自分の意志での受講でしたが、それでも上司や同僚のサポートがなければここまで全力投球できなかったと思っています。また、最終プレゼンテーション会には、直属の上司だけではなく、総支配人まで応援に来てくださり、感激しました。会社には心から感謝しています。




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Q PHMを通し、ホテリエとして、ビジネスパーソンとして、どういった部分を補えたと思いますか。


リーダーシップ、ファイナンス、アセットマネジメントといった分野は、私にとっては新鮮で貴重な学びでした。一緒に学んだクラスメイトから得たことも大きいです。いろんなタイプのホテルの責任者、いろんな立場の人が集っていましたので、多様な考え方や、自社だけでは得られないアドバイスなども、大変貴重でした。また、懇親会などではお酒を飲みながら腹を割って話をし、「悩んでいるのは自分だけじゃない」という安心感も得られました。

社会人になると、失敗が許される場所というのは、それほどありません。ですが、ビジネススクールでは、失敗が許されます。どういうことかと言うと、事前課題のレポートの視点がまったくずれていたり、講師の先生が意図しているものと自分の発言が食い違っていたり、ケーススタディの問題解決の答えが間違っていたり・・・、リアルのビジネスだったら大きな傷跡になってしまいそうな失敗も安心してできるのがビジネススクールの大きな魅力であり、私がPHM講座を受講して本当に良かったと感じるポイントです。ですので、毎回、たくさん恥をかくつもりで受講していました。

また、知識を得るだけではなく、物事の考える視座なり視点なりも大きく変わったと思います。物事を大局的、そして対極的に考えられるようになったと思います。また、物事がどう展開されていくか、先を見据えて判断、アクションする癖がつきました。さらには、ロジカルシンキングの習慣も体得できたと思います。先生からは、What・Where・Why・Howというフレームワークを教わりましたが、この8カ月間、私の頭の中にはこのフレームワークがしっかり入り、この順番で物事を考えるようになれたと思っています。これも、本当に大きなことです。



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最後に、受講を検討している人にアドバイスをお願いします。


ある程度覚悟をもって参加されると良いと思います。毎回、予習があり、議論や発表を繰り返す講義があり、事後課題があります。私は、16回の講義すべてにおいて本気で臨んだので、毎回達成感を得ていました。講義後の懇親会も全て出席したのですが、そうした達成感を味わいながらのお酒は本当に美味しかったですね。例えて言うなら、16の険しい山を登っては下りを繰り返し、その度に体幹や筋力が増強されていくような、まさに脳の加圧トレーニングだったと感じています。









【18.10.19】人材シリーズE最終回「これからのホテル人材開発のあり方」 

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シリーズ「ホテルにおける超人材難時代の人の育て方」の最終回です。指導力のある管理職をどう見極めるか、管理職として未熟な人材をどう成長させるか、その取り組みをホテル人材開発担当者がどうつくっていくかの提案です。ホテルにて人材開発業務経験もある人材開発の専門家の論文です(匿名を希望されています)。ブログとしては少し長いですが、価値ある提案であり、ホテル業界への深い愛情を感じますので、そのまま原文を紹介します。

                               ●構成/宿屋大学




はじめに


宿泊や飲食という「体験」を売るホテルというビジネスにおいて、人材の重要性は言うまでなく大きい。ラグジュアリーな空間や素晴らしい料理など、ホテルのハードがゲストの印象を決める大きな要素であることは間違いないが、そこに人材が介在することにより、ゲストにとってホテルでの体験は何倍も素晴らしいものになりえるし、逆に大きく価値を損なうこともありえる。他ホテルとの差別化を実現するためには、ゲストの体験を素晴らしいものにできる優秀な人材を確保、育成することが肝要であるが、今後ホテル業界の人材獲得は難しい局面を迎えることになる。


魅力的な人材を惹きつけられるかは、ホテルの存続を分ける生命線


まず、ホテル業界に限らず日本全体における労働力人口の減少がある。全体数の減少に加え、その構成においても若年層の減少と老年層の増加が加速しており、各ホテルにおいて最も人材のボリュームが必要な若年層の確保が困難になってきている。

さらに、ホテル業界の採用環境に目を移すと、ホテル間での人材の取り合いというだけ ではなく、他業種も軒並み採用数を増やし、もはや全企業が競合といえる環境の中で、不規則な勤務時間で重労働のイメージのあるホテル業界は、他業種との競争に敗れて人材を失うケースも少なくない。 加えて、折からの訪日外国人数の急拡大と 2020 年の東京オリンピック、パラリンピックの開催決定を受けて、日本中に空前の新規ホテル開業ラッシュが訪れている。爆発的に増えるホテルの数に対し、それに見合う人材の供給が追いつかず、人材不足による倒産も現実味を帯びている。 ホテル業界を担う人材の絶対数を増やすための議論については、労働環境の改善や外国人労働力の活用拡大など、ホテル業界、および国を挙げての議論がなされるべきだが、限られたパイの中で魅力的な人材をいかに自社に惹きつけるかはホテルの存続を分ける生命線であり、ホテルHRにとって先延ばしにすることができない喫緊の課題である。


「起きたことへの対処」ではなく「起こさないための戦略の構築と実行」を


本来であれば、ホテルHRは、その時間と労力の多くを働き手にとって魅力的と感じられる環境作りに割くべきところであるが、果たしてどれだけの熱意を持って効果的に取り組むことができているだろうか。事務的な作業を淡々とこなすだけの影響力の薄いHR(熱意が少ないケース)や、逆に影響力を振りかざしたいがために的外れな施策を講じる厄介なだけのHR(熱意の解釈と使い方を間違えていて効果が薄いケース)に、魅力ある組織作りが難しいのは当然である。例え熱意を持っていたとしても、効果的に立ち回れるかというと、現実はそれほど簡単ではない。なぜなら、すでに起きてしまっていることへの対処に多くの時間と労力を割いているため、課題だと分かっていながらも問題の根本的な部分に手を付けることができていないからである。しかし、それでは今後より苛烈さを増す人材獲得戦争は勝ち抜けない。どこかで、「起きたことへの対処」から「起こさないための戦略の構築と実行」へとスイッチを入れ替えないといけない。

この論文では、旧来のやり方から脱却し、今後起きえる問題に対して前向きに手を打つアクティブなHRの在り方を「管理職昇格時の360 度評価の導入とその運用」を題材に考えていきたい。


どんなに質の良い水を入れても、器に穴が空いていては、水は溜まらない


まず、現在のHR が陥っているジレンマについて考えてみる。本来手をつけるべき問題の根本部分の解決に手が回らないのは、起きた問題への対処に膨大な時間と労力を割いているからだと先に述べたが、具体的には人材の流出=退職に伴う手続きと、退職に伴う空きポジションを埋めるための採用に追われている。 「退職手続きと採用に追われる」→「根本的な問題の解決に手が回らない」→「就労環 境が改善しない」→「組織の魅力が高まらない」→「退職が増える」→「退職手続きと採 用に追われる」…、という無限の負のループに陥っているのである。熱心なHRは、採用の質を上げることで状況の改善を図ろうと試みるが、どんなに質の良い水(人材)を入れても、器(ホテルの組織)に穴が空いている状態では中身は良くならない。

ではどこに手を付けるのか。上記の負のループのうち、 「根本的な問題の解決」に力を注ぐことができたらどのような変化が期待できるだろうか。 「根本的な問題の解決に着手する」→「就労環境が改善する」→「組織の魅力が高まる」 →「退職が減る」→「退職手続きや採用に割く時間を減らせる」→「問題の解決、就労環 境の改善、組織の魅力の向上のためにより多くの時間と労力を割ける」…、という正のル ープが始まる。強固な器を作り、そこに良い水を注いでいけば中身の質も上がり、再び器に穴が空くことはなくなるはずだ。



管理職はコミュニケーションの要


こうした正のループを生み出すための施策の一つとして、今回は管理職昇格時の360度評価の導入とその運用を取り上げたい。管理職をターゲットにした施策を題材とするのは、 ホテルのビジネスの成否において管理職の存在が極めて重要だからである。管理職の担うべき役割はとても幅広い。利益追求という目的を果たすため、自部門の売上向上を図り、同時に無駄な出費を抑える。しかしそのコスト削減によりサービスの質が落ちることがないよう高度なバランス感覚を発揮し、高い顧客満足を実現することが求められる。ピープルマネジメントにおいては、力量、性格、働くモチベーションが異なる多様な人材を率い、個々の持つ力を集約してチームの総力としての最大のアウトプットを引き出すという重要な役割を果たす。「仕事だからやる」、「生活のために必要だから仕方なくやる」という味気ない仕事ではなく、一人ひとりが自己の成長を実感しながらやりがいを持って働ける環境を創ることが求められる。

また、自社が目指している方向性を正しく理解し、それをチームに落とし込んで浸透させていくのも大切な役割である。いま会社で何が起こっていて、経営陣がどのように考え、今後どのような方針が取られていくのか。経営陣と一人ひとりのチームメンバーとの間でコミュニケーションのハブの役割を果たすことで、正しい理解と納得感が醸成される。これだけ多くの役割を果たす管理職がその求めに応じて十分なパフォーマンスを発揮できるかどうかは、その部門にとって、さらにはホテルにとって、ビジネスの成否を左右する最重要な要因になりえる。

しかしながら、上記のような管理職としての役割を正しく理解し、ふさわしい行動、言動で応えることができる管理職は、現実的にはかなり限られていると感じる。こうした現状を作り上げているのは、何もその管理職個人の資質ばかりではなく、その選定の方法にも問題があるのではないだろうか。現実の選定の場面においては「日々の業務をいかに回すか」に重きが置かれ、部門やホテルのビジネス結果を左右する重要人物を選んでいると いう視点が欠けがちであるように感じられるのである。



問題のある管理職昇格の3パターン


ここで、実際に起こりえる誤った管理職昇格の事例をいくつか紹介したい。

まずは、管理職になる前の段階において、非常にパフォーマンスが高い「スタープレイヤー」が抜擢されるケースである。チーム力の向上に意識して取り組んだ結果、その報いとして抜擢されるのではなく、個人としての能力の高さが「結果として」チームへの貢献になっていたというケースである。スポーツの世界でも「名選手、名監督にあらず」という例が多く見られるが、ホテル業界においても同様である。管理職の役割として、チームの総力で結果を出すことが求められるが、スタープレイヤーは人にタスクを任せて回収するのを待つよりも、自分がやった方が早いし仕上がりの質も高いと考える傾向にある。

当然のことではあるが、一人でやれることには限界があることから、最終的にはチームとしての成果は下がることになる。また、「スタープレイヤーとして結果を残し続けてきた人には、できない人の気持ちが理解できない」という特徴が表れやすい。スタープレイヤーがこなすのと同等のレベルで要求に応えられるチームメンバーの数は当然限られる(またはいないかもしれない)が、それが理解できない。人はそれぞれに良さがあるし、成長のスピードも人それぞれであるのに、それに気づけずに厳しく当たってしまったり、早期で人を見切ってしまう。結局、メンバーがチームを去ることになっても、 代わりになる人材を容易に見つけることなどできないため、人材の流出に歯止めが掛からずにチームが崩壊してしまう。

二つ目に、上司からの評価が高い人材が抜擢されるケースである。ポイントは、評価が高いのは上司からのみで、同ポジションの同僚や部下、他部署からの評判が悪いことである。上司から頼まれた仕事はそのほかの優先順位を崩してでも最優先で対応することから、上司からは「レスポンスも早いし優秀」という評価を受けることとなる。しかし、崩した優先順位の歪みは当然そのほかの場所に波及することになるため、上司以外が良い顔をす ることはない。 こうした人材が抜擢された際によく陥るジレンマとしては、例えば部下が「もうあの人の下では働けない」と悲鳴を上げた場合においても、問題の解決に時間が掛かることが挙 げられる。HR からその管理職の上司に対し問題になっていることを説明し、解決に向けて アクションを取ってもらうよう依頼しても、その上司は何が問題であるのかを理解することができない。それは問題となっている管理職は上司には良い顔しか見せていないためで、上司としても「あいつは良くやっているから」とそれ以上深く考えようとしない。複数の部下から悲鳴が寄せられ、いよいよその管理職を外すのか、その人物が残るのであれば複数の部下が退職する、という究極の選択が求められる場面においても、上司は決断することができない。なぜならば、その上司にとっては常に自分のために結果を出してくれる優秀な部下を失うことになり、困ってしまうからである。結局判断が遅れ、希望を失った部下が会社を去ることになるのは非常に悲しいことである。

三つ目は、とりあえず空いたポジションを埋めるために、まだ準備が整っていない人材を抜擢するケースである。地位が人を育てることももちろんありえるが、うまくいくケースは限られており、例えうまくいったとしても狙った通りになったというよりは「ラッキーだった」としか言えない。こうした抜擢が行われるのは、先に述べたように「オペレーションを回す」ために必要だからで、本来管理職に求められている役割からは大きく離れており、最大のビジネス結果を望むのは難しい。



部下に「その人に付いていきたいと思えるか」を問う


誤った人材の管理職昇格が、時に組織を滅ぼすほどのリスクを帯びていることを述べてきたが、それでも次の管理職を選ばなければならない場面が訪れた時に、組織の力を高める正しい人材を抜擢するための具体的な案として、360 度評価の導入を挙げたい。通常、昇格の決定においては部門長の推薦をもとに、人事部長、経理部長、総支配人などの関係者による審査、承認を経て決定に至るケースが多い。この審査の過程に部下や同列の同僚、業務上やり取りの多い他部署の関係者を含めることが、今回の提案の主旨である。部門の上司から管理職昇格についての推薦があったときに、HR主導でアンケートを実施する。内容はシンプルであればシンプルであるほど良く、回答に時間と手間がかかり過ぎることで回答が得られないという事態を防ぐ。また、その回答を誰から得たのかを被考課者に漏洩しない旨を約束することを前提に、記名での回答を依頼する。

まず、同部門の部下、同列の同僚に問うのは、端的に言えば「尊敬できる上司か」、「その人に付いていきたいと思えるか」である。それを問うための具体的な質問の例を挙げてみる。

@その部門で必要とされる専門知識を備えているか(5 点満点)
A十分な問題解決のスキルを備えているか(5 点満点)
B部門が抱える困難に対し、積極的に関与して解決に取り組んでいるか(5 点満点)
C自分に対するコミュニケーションが十分であると感じるか(5 点満点)
D被考課者の関心はどこに向いていると感じるか (@. 上司、A. ゲスト、B. 部下・同列の同僚、それぞれに対し 100%のうち何%ずつか)
E立場が違う人(部下、パートタイマーや派遣スタッフ、外部のパートナー会社のスタ ッフなど)への配慮があるか(5 点満点)
F被考課者の強み、弱みはどこにあるか(フリー記述、任意)
G被考課者が今後管理職になることへの期待と懸念はどういったものか(フリー記述、 任意)
H被考課者が良い管理職になるために必要と感じるのはどういったことか(フリー記述、 任意)
I被考課者を管理職に推薦するか(Yes/No)

@とAはセットで、Aがあれば@を備えた同僚、部下と協力することで問題解決を図っていけることから、必ずしも@を持っている必要はないと言える。Bは率先して取り組む姿勢のない上司は尊敬を勝ちえることはないであろう。Cは業務上の指示以外にも多くのコミュニケーションを取ることで、被考課者の人間性や考えを知り、人としての魅力を感 じる機会が十分にあるかを問うている。Dは先に述べた誤った管理職昇格の 2 つ目の例が 当てはまるかを知るために問う。Eの質問は、地位が上がった途端に急に尊大になり、自分より弱い立場の人に対して横柄な態度を取る人がいるが、その危険性を測るために非常に効果的だ。一方で、どんな立場の人にも平等に接する人には、その人が本当に困った時や必要とした時に周囲が自然と手を差し伸べるものだ。FからHのフリー記述項目は、@からEの質問で点数をつけるだけでは拾いきれない回答者の心の声を拾うのに有効である。 そしてIで率直に管理職として、上司として認められるかを問う。

他部署の関係者に問うのはその人と仕事がしやすいかである。ここでいう「仕事のしやすさ」とは、なあなあで仕事をするという意味ではなく、会社の全体最適のために協力して仕事を進められるという意味であるが、それを問うのに下記のような質問をぶつけてみたい。

@自部署とのコミュニケーションは良好か(5 点満点)
A被考課者と自部署との利害が相反する時に、ホテルの全体最適やゲストにとっての最 適を考えた落とし所を見つけようとしているか(5 点満点)
B被考課者が今後管理職になることへの期待と懸念はどういったものか(フリー記述、 任意)
C被考課者が自部署と良好な関係を築くことができる管理職になるために必要と感じ るのはどういったことか(フリー記述、任意)
D被考課者を管理職に推薦するか(Yes/No)

ホテルの仕事は個人や自分の部署のみで解決できることばかりではなく、様々な人、部署の協力によって解決に導くことが多いことから、@で問う各部署間の良好なコミュニケーションは欠かすことができない。また例えば他部署から何かしらの依頼を受けた時に、その日の気分や依頼主との関係性によって判断の基準が変わるのは好ましくない。Aで問うているようにホテル全体の目線、ゲストの目線から、ときには譲歩し、ときには自己の主張を押し通しながら最適な解を見出すことが管理職には求められる。BおよびCで被考課者の具体的な良さ、至らなさのヒントを掴み、Dの質問で率直に被考課者と仕事がしやすいかを問う。



管理職人材の「選定」だけではなく、キャリア形成にも最大限利用する


上記のようなアンケートを実施して得られた結果を点数化し、一定の基準を満たせば昇格を認めるが、満たせなかった場合には昇格を見送る。誤った人材を管理職に昇格させないで済むという点では、この仕組みの導入はそれなりの効果を上げることができるであろう。しかし、ホテルが抱える人材の開発を担うHRの役割として、それは十分な成果といえるだろうか。はじめに述べたように、ホテル業界の人材を巡る競争が今後ますます苛烈さを増していくなかで、一人の人材が管理職になるための要件を満たさなかったからといって、すぐに同レベルかそれ以上のレベルにある他の人材を内外から発掘するのは非常に難しい。であるならば、ホテルHRとしての役割は、この仕組みの目的を管理職人材の「選定」に使うのに留めるのではなく、このアンケートの結果としてあぶり出された被考課者の現在の立ち位置を把握し、到達したいゴールとの差を埋めるための継続的な「支援」の材料として、将来的にはその人材が管理職として活躍できるよう、成長を促すことなのではないだろうか。





仕組みの導入に留まらないHRの役割


被考課者が上司から信頼を得ているのはもちろんのこと、同列の同僚や部下、他部署の関係者からも認められている人材の場合、会社は管理職への昇格という形でこれまでの貢 献に報いる。旧来の HR であればその手続きを滞りなく進めることで及第点なのであろうが、人材難の時代を勝ち抜く HR の役割としては十分ではない。 今回のアンケートの結果をフィードバックする機会を持ち、その場を新任管理職の今後のキャリア形成のために最大限利用する。集まったポジティブなフィードバックを伝えるのはもちろんのこと、本人にとって耳が痛いことでも率直に伝える。これは、より良い管理職になるための向上のヒントとしてとても重要である。今後のキャリアプランもヒアリングし、その実現のために会社としてできるサポートについて一緒に確認する。そして何より、会社がその人材を重要な財産として大切に考えているということを伝えるのを忘れてはならない。一方、昇格のための基準に満たなかった場合は、この機会を今後の大きな成長のための重要な分岐点とするために、より多くの労力と時間を割いてフィードバックを行うべきだ。


「足りない部分を埋めた未来は今よりも良くなる」と伝える


まずは、「次の管理職候補として期待されていること」と、「どういった点が評価されているのか」を伝える。一方で、「管理職になるにはまだ向上を必要とする点がある」ことを率直に伝える。しかし、それは決して悲観的なことではなく、これまでの良さを残しつつ現在足りていない部分を埋め合わせていくことで、今後管理職としてさらなるキャリアの発展の可能性があることを示す。大切なのは、足りない部分を埋め合わせた未来が今よりも良いものであると想像させることだ。より良い未来が見えているからこそ、苦手な分野や向上が必要と気づいていながら後回しにしていたことに着手するためのモチベーションが生まれる。こうして意欲を高めた上で、いつまでにどうやって望ましい地点にたどり着くかを、具体的なアクションプランと期限を設定し、合意を形成する。HR としてできるサポートについても最大限に実行していくことを約束する。

こうしたディスカッションが最大限の効果を生むためにも、先のアンケートでより詳細で正直なフィードバックを得られていることが極めて重要だ。先にアンケートはシンプルであればシンプルであるほど良いと述べたが、こうした仕組みを導入する際に「より素晴らしい仕組みにしたい」というHRの欲が出過ぎてしまうと良くない。あまりに凝りすぎて回答するのが面倒臭いと感じられるようでは、有効な回答は得られ難い。HR の成果を示すための導入ではなく、貴重な人材に成長の場を与えるという導入の目的を忘れてはならない。

アンケートを記名式にするのも重要なポイントである。無記名の場合、回答内容の責任を問われないことから個人的な好き嫌いのみで判断したり、日頃蓄積している文句をぶつけるだけの場になってしまうことがありえる。しかし、気に入らない人の足を引っ張り合うような組織に成長は望めない。被考課者の存在がホテルの健全な血流の妨げになっているのであれば、それに不満を持つ者は文句を言うことでなく、「こうなってほしい」という期待を伝えることで改善に貢献できるはずだ。そのため、「なぜそのような回答をしたのか」と疑問を持つことがあれば、HR がそれを回答者本人に直接確認し改善につなげられるようにしたい。 アンケートに回答した結果、被考課者が目に見えて変化したという実感を持ってもらえれば、「このホテルは良くなっていく」という希望を持ってもらえるし、そうでなければ「言っても無駄」となる。HR の取り組み次第で集めたたくさんの声は宝の山にもなりえるし、逆にゴミの山にもなりえる。



理想的な導入の形


こうした評価の仕組みをどのタイミングで用いるのが望ましいか。管理職ポストに空きが生じ、そのポストに収まるのは誰がふさわしいかを探して、そこから評価に掛けるのでは遅い。評価結果が良好で、「管理職昇格の準備ができていた」ということであれば、それは幸運だが、評価の結果、「その候補者の準備がまだ整っていない」ということが明らかになった場合、重要な管理職ポジションが空いたままの状態で準備が整うのを待つか、いつ見つかるか分からない(もしくは見つからないかもしれない)外部の人材を探すことになる。準備が整っていないまま「組織の見た目を整えるため」に昇格させることはできる限り避けたい。準備が後手に回ると大きな機会損失を招いてしまうが、それを防ぐためにも次の管理職を担う人材を早くに選定し、360度評価を用いて現在の立ち位置を明らかにして、管理職としての準備を整えるためのアクションプランの実行を開始しておきたい。理想形は、各部門キーポジションの後継者育成のためのサクセッションプランのスタートとして、後継者候補として選定された人材の現在の立ち位置を把握するのに用いるのが最も効果的と考える。


おわりに


ホテル内で血流が滞っている箇所を見つけ、解決のための施策を構築し、その施策の運用を通じてホテルの働く環境を改善して、組織としての魅力を高める。HR がこうした役割を果たすことができた時、ほかのホテルとの人材を巡る戦いを優位に進めることが可能となる。 今回題材として取り上げた管理職昇格時の 360 度評価の導入は、仕組みとしてはそれほど目新しいものではない。しかし、もしこれを効果的に運用することができれば、被考課者は管理職として成長する機会を得て、管理職として働くことの楽しみややりがいを見つけることができ、そのホテルで働き続けることのメリットを存分に感じることができる。

そうして管理職が生き生きと働く環境下では、自分もいつかあのような管理職になりたいという目標を持ち、日々の業務に前向きに取り組む、新たな魅力的な人材が生まれる。良い人材が集う組織には良い人材が惹きつけられ、いつか、冒頭に書いた人材不足など嘘のように、 「人材で勝つ」組織が出来上がる。HRとして忘れてはならない大切なことは、仕組みを作ることが目的ではなく、その仕組みを活かしてホテルの成長に貢献できるよう熱意を持って取り組むこと、自分が評価されるためにやるのではなく、ホテルの全体最適のためにやること、そして、HRとして関わる人の成長のために本気で向き合うこと。もちろん言うほど簡単なことではないが、一人でも多くの人に成長ややりがいを実感してもらえる環境を作り、問題を抱える部門の問題解決や、所属するホテルの魅力の向上に貢献できる HRパーソンになっていきたいと思う。



【18.10.01】連載「お金をかけずに今すぐできるWEB集客」vol.11

【短期収益編】≪第11回 自社ホームページで魅せる → 獲得!A「ホームページの1面トップに何を載せるか?」 スマホ編≫



宿屋大学メールマガジン読者の皆々様へ

(株) 宿援隊 & (株) 宿 力 の石井太樹です。第11回のメールマガジンを配信させていただきます。

前回、「ホームページPC版のトップ画面に何を載せるか?」についてお伝えしましたが、今回は、「スマートフォンページに何を載せるか?」 について述べたいと思います。

そもそもホームページには、『吟味検討したい』 と 『さっさと予約したい』 という2つのニーズがありますが、スマートフォンページについては、後者のニーズが高い傾向です。
ただ、とりわけ若年層は、吟味検討もスマートフォンでする傾向があるので、スマートフォンページについては、PCページ同様、両方のニーズに応える必要があるわけです。(大学のレポートまでスマートフォンで作成していると聞いた時は、さすがにビックリしました)
※上記傾向は、とりわけリゾートホテルや温泉旅館など、観光需要(レジャーユース)が高い施設や高級ホテル・旅館に顕著です。

それでは、上記2つのニーズそれぞれについて、実在するスマートフォンページを紹介したいと思います。

まずは、『吟味検討したい』 というニーズについてです。


《“吟味検討” 対策》

今回も前回メルマガでPCページを紹介した 《大船渡温泉》 を事例に挙げます。
再掲しますが、この施設の魅力、とりわけUSP(Unique Selling Proposition) = 競合他館が真似できない、あるいは真似しにくい独自の “ウリ” は

@高台に真東向いて位置しているため、水平線など三陸海岸の眺望が素晴らしい。とりわけRising Sun(ご来光)はお見事。

Aこの施設のオーナーは漁師 = 三陸の取れたての魚貝類が堪能できる

です。


この “ウリ” をPCページ同様、『魅力抽象』 → 『魅力具体』 → 『宿泊プラン』 という構成で露出します。
この構成こそが予約獲得への最短距離です。


T.『魅力抽象(イメージ)』 (PCページと同じです。詳細は前回のメルマガ
をご覧ください)



※魅力をイメージとして発信するスライド画事例 4〜7枚が適正


U.『魅力具体』 (PCページと同じです。詳細は前回のメルマガをご覧ください)

前回のメルマガ


※『魅力具体』事例:タイトルは「大船渡温泉の魅どころ」 画像中心→文字で補完


V.『宿泊プラン』 (PCページと同じです。詳細は前回のメルマガをご覧ください)

前回のメルマガ

※売れ筋宿泊プラン露出事例:『魅力抽象』→『魅力具体』の直下に露出するのがミソ




繰返しますが、『魅力抽象』 → 『魅力具体』 → 『宿泊プラン』 という構成が、予約獲得に繋がる構成になります。
《“さっさと予約” 対策》



W.『トップページ最上部』



トップページ最上部には、電話番号を必ず記載します。なぜなら、アナログチャネルとはいえ、電話予約も(コミッションのかからない)大事な販売チャネルだからです。その際、ただ電話番号を載せるだけでなく、「ここをタッチしたら、直電かけられまっせ〜〜〜!」というメッセージを添えることも重要です。
また、最上部には、「交通・アクセス」ボタンを掲載することも重要です。なぜなら、スマートフォンで検索する消費者がトップページの次に閲覧するのは、「交通・アクセス」だからです。
※利用当日、カーナビや地図がわりにする人を含みます。
この点がPCで検索する消費者の傾向と異なります。
※PCの場合、消費者の趣味趣向により、トップページの次に見られるページが「客室」「料理」「風呂」「周辺観光」など、多岐に分散する傾向です。



※最上部には必ず「電話番号」と「交通・アクセス」を掲載!!


X.『4つの固定』



スマートフォンで、「大船渡温泉」のトップページだけでなく、「客室」「料理」「温泉」など、他のページもご覧ください。
なにかに気付きませんか??? そう、最下部のタブ(ボタン)が固定しているのです!
左から「宿泊予約」(スマホによるWEB直予約 色味をつけて目立たせる!)→「お電話」(電話マーク・・・いかにも直電がかけられそう)→「交通・アクセス」(上述の理由から、「交通・アクセス」は独立させる = One of Them にしない が鉄則!)→「メニュー」(すなわち “その他”) という構成になっております。
消費者の趣味趣向は、千差万別です。よって “刺さる” 場面が異なります。客室重視の人は客室ページで、食重視の人は料理ページで、お風呂重視の人は温泉ページで、それぞれ刺さった場合、上部に戻ることなく、「即WEB予約」「即TEL予約」できる環境を整えることが重要なのです!なぜなら、ビジネスは、「消費者に刺さった時が売り時」だからです。
この『4つの固定』により、コンバージョン率(予約成約率)は俄然UPするはずです。
尚、PCページの場合、上部固定でも、下部固定でもいいのですが、スマートフォンページでは下部固定でないとダメです。
スマートフォンを片手で持ってください。きっと貴方は中段から下を持つはずです。
その際、(左手で持った場合)もし上部固定だったら、親指届きませんよね?
下部固定なら、親指が届き、片手で容易に各タブが押せます。
そして、近い方(左側)から「宿泊予約」→「お電話」→「交通・アクセス」→「メニュー」とすることで、より簡単に予約ができる環境を整えることが肝要なのです。
こうしたユーザビリティーを鑑みたページ構成にすることで、きっと予約獲得がUPしますヨ!!


※「宿泊予約」→「お電話」→「交通・アクセス」→「メニュー」  を下部固定することで、予約獲得とユーザビリティー向上!




次回(最終回)は、レベニューコントロール = リストリクション(販売制限)
⇒ 「同伴係数(一室人数)コントロール」「“松竹梅”戦略」「販売チャネル戦略」 についてお伝えしたいと思います。


なお、これまでのバックナンバーは、
http://www.yadoyadaigaku.com/info/data1/171006-081601.html

をご覧ください。


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“WEB集客とレベニューコントロールのプロ集団”
 株式会社 宿援隊 代表取締役社長
 株式会社 宿力 取締役東京支社長 
 石井 太樹
 http://yado-riki.com/
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【18.09.30】人材シリーズD「スタッフの幸せ度合いと、生み出す価値の総量は正比例する」 

         

シリーズ「ホテルにおける超人材難時代の人の育て方」の五回目は、「社員の幸せ」にフォーカスします。社員の離職が激しいホテルを見るにつけ、そのホテルの経営者やマネジャーは、「なぜお客さまや上司に使うホスピタリティマインドを、部下や後輩に使わないのだろうか」と疑問を抱きます。ES(社員満足)がCS(顧客満足)をつくり、CSが収益をつくるというサービスプロフィットチェーン理論が周知されているにも関わらず、いまだにスタッフをコマとしてしか考えなかったり、人間扱いしなかったりするホテル経営者やマネジャーがいるのは、驚くばかりです。今回は、「ホテル経営はスタッフの幸せが原点」というポリシーでいくつものホテルの総支配人を務めた、宿屋大学の秋元達也顧問が、「ESが健全なホテル経営をする大前提となる」論理を伝えます。

                         ●文・宿屋大学 顧問 秋元達也



マネジャーとは、人を育てられる人のことを言う


私が現役のホテル総支配人だったとき、ホテル運営を何から始めたかというと、「社員の幸せをどうつくっていくか」を考えることからでした。私は4つのホテルで総支配人という職を担いましたが、どこも、社員の幸せから取り組んだ結果、CSも利益も向上した経験があります。このことをホテル経営者に知っていただき、行動に移すきっかけになればと思い、今回ブログの一パートを担当しようと思いました。

大前提として、マネジャーの必須要件には、「人を育てる」というタスクがあります。
「マネジメントができる」ということは、人材を育てられるということです。人を育てられるマネジャーこそ評価し、昇給させていくべきなのに、多くのホテルでは、@経験年数が長い、A接客技術が高い、B上司の方ばかり向いている、Cお客さまにだけはいやに愛想がよいといったマネジャーばかりが評価されているのが現状ではないでしょうか。こうしたホテルでは、部下を育てることを重要視しないのです。

人を育てられないマネジャー、その人の下で働く人はいつも辛い顔をして仕事をしていたり、離職が続くといった状態のマネジャーは、経営者がしっかり対処しなければいけないのです。サービスマンとして優秀であっても、マネジャーとしては失格です。決して放置してはいけません。

ソリューション(解決策)は、シンプルです。
評価制度のなかで、「部下を育てられているか」という項目を設け、それを重視する評価制度にすればいいのです。

もちろん、経営者というリーダーが、「スタッフを大切に思う気持ちを持ち、リーダー自らスタッフを育てることを優先する」スタンスを持たなければ何も始まらないことは言わずもがなですが。売上・利益が伸び悩んだり、予算未達に陥りそうになる時というのは、利益にばかり目が行きがちですが、経営者たるもの、サービス業の場合、売上・利益というのは、スタッフがつくっていることを肝に銘じ、スタッフの幸せを追求することを自分のミッションに置くべきなのです。

人は、必要とされると自分は意味のある存在であることを感じて幸福感を得ます。
よいチームの中で、助け合いながら仕事ができていると自分の居場所を感じて幸福感を得ます。
感謝されたり褒められても幸福感を得ます。
給与や休みも大事ですが、お金のかからない上記のようなマネジメントの対応も、とても大事なのです。


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社員が幸せであることの経営的な意味


では、社員が幸せであると企業経営においてどんなメリットがあるかを考えてみたいと思います。私が改めて述べるまでもないことばかりですが。

@自発的に動いてくれます。幸せなスタッフが仕事をすると、上司からの指示を待つのではなく、自分で考えて、お客さまのため、会社のために、喜んで働いてくれます。

Aハッピーが循環します。ハッピーオーラを振りまきながら、笑顔で仕事をすると、それが伝播します。空気感染するかの如く、スタッフやお客さまにも伝わっていきます。

B離職率が下がります。「新規スタッフ募集」をする必要が少なくなり、その面での経費が削減できます。また、「離職率が低い」という事実は、その会社のイメージが良くなり、入社希望者が増え、質の高い人材が集まります。採用ばかり努力しているホテルをよく見かけますが、採用にかける手間暇コストよりも、離職を減らす手間暇コストの方がよほど少なくて済むのです。




CSのためのESではなく、ESのためのCS


「ES」を最優先させているホテル企業の事例を紹介します。
このホテル企業は、宴会場を敢えて持っていません。なぜ宴会場を持たないのか。選択と集中という考え方もありますが、一番は、ES維持のためです。宴会場で夕食を取った後の光景を思い浮かべてください。「酔っぱらって大声を出す」「スタッフに絡む」お客さまの光景が容易に想像できるのではないでしょうか。スタッフに余計なストレスを与えないようにしているのです。こうすることによって仕事の集中力を、最も来ていただきたいお客さまに向けることができるのです。結果、CSが上がります。

一般的な考えですと、「ESは、CS向上のために行なう」のですが、この企業の場合、「ESのためにCSを向上させる」のです。ホテルで働く人のモチベーションは、お客さまの喜びから生まれることが多いからです。


生み出す価値の総量は、スタッフの幸せ度合いと正比例する


サービス業においては、スタッフは労働力でもあり、商品でもあります(お客さまはスタッフの応対でホテルの質を判断しますから)。少しでも多くの利益を出すには、スタッフたちが最大の力を発揮できることが望まれます。その力を引き出すのは、リーダーの考え方、行動力がすべてです。私は、スタッフたちが創り出す力(価値)の総量は、スタッフたちの幸せ度合いと正比例すると確信しています。スタッフたちの幸せが経営の原点であると認識し、覚悟を持って臨めるか、経営の成否は、このようなリーダーの胆(たん)にかかっているのです。



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●秋元達也プロフィール

大学卒業後、ホテルオークラ入社、レストラン・宴会関係を現場で経験、郊外型レストランにてオペレーション、マネジメントを経験。退社後、ホテル事業家を目指し、レストラン会社を共同で立ち上げ経営をしたが、2年間で失敗を経験。その後ANAエンタープライズ(株)に入社、京都全日空ホテルの開業準備、開業後料飲部統括、東京全日空ホテルにて宴会関係、宿泊関係の現場を経験し、宿泊部長、料飲部長を歴任し、マネジメントをしっかり経験・教育される。その後、万座ビーチホテル(沖縄)、松山全日空ホテル、千歳全日空ホテル(北海道)、成田全日空ホテルにて総支配人を経験、定年退職後、住友不動産ヴィラフォンテーヌ(株)入社、直営15ホテルの運営責任者を経て、ホテル・旅館のコンサルタント「エーエム・ワークス」にてパートナーとして活動、主に地方のホテルに対してのコンサルを実施。2017年、宿屋大学顧問に就任、現在に至る。




【18.09.13】人材シリーズC「もしかして、あなたもブラック上司?!」 

インタビュー 株式会社 Indigo Blue 代表取締役会長 柴田励司氏


シリーズ「ホテルにおける超人材難時代の人の育て方」の四回目は、「ブラック上司」にフォーカスします。前回のパワハラ問題同様、「自分たちは正しいことをしている」との認識で部下と接していても、実は部下から見たら完全に「ブラック上司」の言動になっていることが多いのです。かつて京王プラザホテルでも働いたことのあるコンサルタント、株式会社 Indigo Blue の柴田励司代表取締役会長のインタビューと、柴田氏の近著である『もしかして、ブラック上司?』の内容をもとに、「ブラック上司にならないためのポイント」を紹介します。

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ブラック上司診断表


まずは、下記の問診票にお答えください。

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この「ブラック上司診断表」は、柴田氏の『もしかして、ブラック上司?』に紹介されているブラック上司病にかかっている症状の具体例をリストアップしたものです。半分以上に✓マークが入った人はご自身の「上司としての在り方」を問い直す必要がありそうです。

診断リストの多くに✓マークが入ってしまった人には、下記のような傾向がないでしょうか。

@上司と部下には上下関係があると考えている
A気遣いは上司にすべきで部下にはしなくていいと無意識に考えてしまっている
B自分の価値基準で部下を指導すべきだ
C苦労や理不尽を耐え抜いてこそ、成長がある
D価値基準や常識が変化し、また多様化していることに気付いていない

これらの考え方は、20年前のホテル業界では「当たり前」にまかり通っていて、この考え方で上手くいっていたのかもしれませんが、今では通用しません。世の中は変化しているし、価値基準も多様です。また、20年の世代間には大きなギャップがあるのです。

ブラック上司になってしまう人の傾向は、この「変化を無視している」ところです。



ホテル業界はガラパゴス化している可能性がある?!


では、このように、時代の変化に気付かず、時代から取り残されてしまっている人たちに、どうしたらそれを気付かせてあげられるのでしょうか。それを知りたいと思い、柴田会長をインタビューしました。

まずは、この現状をどうお感じになっていますか。

柴田 今回のブログ連載のお話をいただき、一連の内容を拝見しましたが、ホテル業界の実情は、私がホテルで働いていた30年近く前と、あまり変わっていないように感じました。チアリーディングや体操の話とか、アメフトの例とか、スポーツ界では、まだまだ根性論一辺倒で「汗と涙を流せ」的な指導がはびこっていますが、それと同じ環境でしょうね。

ブラック上司の典型的な症状のひとつに、「部下の時間を奪う」ということが挙げられます。

上司として決めなければいけないことも決めない。だから、部下はどうしていいかわからないために前に進めない、仕事ができないということがあります。これは、明らかにブラックです。部下の状況を確認しないで、自分の都合だけで部下を呼びつけたりすることなども、気付かぬうちにやっちゃっている人は多いと思いますが、これもブラック上司の症例には多いですね。または、会社が業務の効率化のためにペーパーレス化を進めようとしているのに、「昔から、この用紙を使ってやっていたのだから、うちはこのままこれでやる」と言いつつ、部下に二度手間を強いるなどの症例もよく聞きます。

ようは、部下を自分のしもべだと勘違いしているのでしょうか

こういう方々は、自分がこれまでされてきたことをそのまま部下にやっちゃっているのです。

また、ホテル業界とスポーツ業界の共通点は、「上下という意識が強い」ということです。

いま挙がった「部下の状況を判断しないで呼びつける」や「決めないために部下の時間を奪っている」といったことがブラック上司の事例になっていることは、まだ気付いていない人が多いと思いますが、一方で、下記のようなことにはみなさん、やってはいけないことと気付き始めています。

例えば、
「定時になっても帰らず、その時間になると仕事のギアを上げる」
「部下の休日中にメールをバンバン送る」
「目的を言わずに指示命令をする」
といったことです。

もし仮に、こうしたことがダメなことであることにホテル業界が気付いていないのならば、その理由は「よその業界や、今の世の中の変化を知らない」ということなのだと思います。よその業界は、業界をまたいで転職をすることも当たり前ですので、いろんな価値観が比較的入ってきやすい環境にあります。しかし、ホテル業界は、転職は頻繁に行われているとはいえ、ある程度上のレイヤーになると業界内だけで動いている人がほとんどで、よその業界からの人の流入が極めて少ないということ、つまり閉鎖的な業界であることが、進化を妨げ、ガラパゴス化してしまっている原因なのではないでしょうか。そこが大きな問題なのだと思います。

仕事をする上でのスキルを、私は3つに分けています。
下記の3つです。

●特定スキル・・・・・・特定の会社の、特定の仕事に必要なスキル
●ポータブルスキル・・・どこの会社に行っても、どんな仕事についても必要なスキル
●心の持ちよう・・・・・人間性

で、ホテルで働く方々は、このうちの「特定スキル」を磨くことばかりに熱心なようです。ポータブルスキルを磨く努力をあまりしない。この辺にも課題がありそうです。

そういう意味では、外部の研修講師による研修や、外部のビジネススクールに社員を通わせるということも、ホテル業界では非常に控えめなのではないでしょうか?




「人材こそホテルの資産」と言いつつ、その資産を磨こうとしない


確かに、ホテル企業は「ヒトこそホテルの資産・商品である」と言いつつ、人を磨くことにお金を使わない傾向にあると感じています。産労総合研究所というところの調査によると、1人当たりの教育研修費用(2016年度実績額)は平均37,177円だそうですが、ホテルの場合、1人当たりの教育研修費用は、その半分もないところがほとんどだと思います。



柴田 大前提として、人を大事にする企業でないと、これからはますます人は集まらないと思いますよ。「人の意見に耳を傾けない」「人間性の否定をする」といったブラック上司がいまだにのさばっている企業は、いずれ淘汰されるでしょう。スポーツ界やホテル業界の方々は、自分を客観視する機会や、違う業界の人と話をする異業種交流会といった機会がないのでしょうね。自分たちの常識は、世間の非常識になりつつあることを認識すべきでしょう。

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仕事以外のところでつながっているかどうか


ご著書の中に、「ブラック上司とホワイト上司は紙一重の違いだけれど、その違いは信頼関係の有無」というメッセージがありますが、信頼関係が築かれている組織とそうではない組織は、根本的に何が違うのでしょうか。


柴田 これは、昔も今も変わらないのですが、要は「仕事以外のところでもちゃんとつながっているかどうか」です。仕事の時間だけのお付き合いだけではなく、息子さんが熱を出して欠席された同僚に翌日「息子さん、良くなった? 大変でしたね」といった気遣いの言葉を掛けられるかとか、休みの日に同僚が集まってどこかに出かけるとか、つまり、仕事を離れたときに付き合いの濃度が、信頼関係に直結します。

あとは、「リーダーがニコニコしているか」ですね。危機感をあおりすぎたり、暗い顔を見せたりするのではなく、話しかけやすいリーダーがいるところは、健全な組織になっています。



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      『もしかしてブラック上司?』柴田 励司 (著)
        単行本(ソフトカバー): 224ページ
         出版社: ぱる出版 (2018/4/11)


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